ドМ彼氏。

秋月 みろく

文字の大きさ
上 下
174 / 188
最終話「初踏みの日」

1

しおりを挟む


 決めた。私は決めた。ぜったいに決めた。

 今度こそは、主任と別れてやる。


「はあ~?」


 昼休みに行った牛丼屋で決意を報告したところ、美里はひどく顔を歪めた。


「美里ちん、美人なお顔が台無しだよ」

「あんたねー、なんでそういう結論になんの?好きなのに別れてどうすんのよ」


 そう言ってドンブリを置き、水を飲む。


「私だってあのことがあって、ちょっとは思ったよ?もしかして主任のこと好きなのかな~?ってね」

「好きでしょ。それで合ってるじゃない」

「ちっがうの!よくよく考えてみたら、これはずっと私に忠実だった犬が、急に他の人に懐いちゃって、そんでちょっと寂しく感じてしまう独占欲なんだよ!」

「好きだからそう感じるんでしょ」

「美里、ちょっと想像してみて」


 私も水を飲み、場を落ち着けてから話した。


「ある日突然、スーパーデラックスなロボットが届いたとします」

「突飛なはなし~」

「そのロボットはとてつもなくカッコ良くて、美里の好みドンピシャな見た目です。しかもなんでもしてくれます。掃除洗濯、料理などの身の回りの世話から、生活費の工面まで全てやってくれます。男前ロボットはそれが自分の幸せだというのです」

「やっぱ主任ってあんたの好みドンピシャなんだ」

「た、たとえだよ、たとえ。ちゃんと想像してね。美里のためにだけ動いてるようなロボットだよ?」


 美里は目を閉じた。私の話を頭の中に思い浮かべ、リアルに想像してくれているようだ。


「なんか、私は無理かも……料理とか、作りたい派だし」

「はあ!?」


 私は思わず椅子に反り返って落っこちそうになった。


「そんなに驚くことなの?」

「くぁあ~!ばっかだね~美里ちん!なんっにも!しなくていいんだよ!?ぐーたらぐーたらやって遊ぶだけだよ!?小学生の夏休みだよ!?あの頃に帰りたくないっていうの!?」

「三日で飽きそう」

「そんなことないって!ゲームもネットも漫画もあるし!こんなに娯楽で溢れてんのに飽きるわけないじゃん!」


 ついつい熱弁してしまったが「もういいから。さっさと続き」と急かされて、私は狭い椅子の上で姿勢を正した。


「じゃ、続きね。そんな美里だけに忠実なロボットがだよ?美里以外に興味なんてなさそうなロボットがだよ?ある日女の子と歩いてるとこを目撃しちゃうの」


 美里が想像しやすいように少しを間をとってから、「どんな気持ち?」と顔を覗き込む。

 彼女は、う~~んと小さく唸った。


「……いい気はしないかな?」

「それはロボットのことが好きだからですか?」

「……微妙なとこだね。好きだけど恋愛感情ではないかも。ロボットだしね」

「でっしょー!?そういうことなんだよ!さ、牛丼たーべよ!」


 共感を得て満足し、割り箸をわる。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

JC💋フェラ

山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

両隣から喘ぎ声が聞こえてくるので僕らもヤろうということになった

ヘロディア
恋愛
妻と一緒に寝る主人公だったが、変な声を耳にして、目が覚めてしまう。 その声は、隣の家から薄い壁を伝って聞こえてくる喘ぎ声だった。 欲情が刺激された主人公は…

処理中です...