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最終話「初踏みの日」
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しおりを挟む決めた。私は決めた。ぜったいに決めた。
今度こそは、主任と別れてやる。
「はあ~?」
昼休みに行った牛丼屋で決意を報告したところ、美里はひどく顔を歪めた。
「美里ちん、美人なお顔が台無しだよ」
「あんたねー、なんでそういう結論になんの?好きなのに別れてどうすんのよ」
そう言ってドンブリを置き、水を飲む。
「私だってあのことがあって、ちょっとは思ったよ?もしかして主任のこと好きなのかな~?ってね」
「好きでしょ。それで合ってるじゃない」
「ちっがうの!よくよく考えてみたら、これはずっと私に忠実だった犬が、急に他の人に懐いちゃって、そんでちょっと寂しく感じてしまう独占欲なんだよ!」
「好きだからそう感じるんでしょ」
「美里、ちょっと想像してみて」
私も水を飲み、場を落ち着けてから話した。
「ある日突然、スーパーデラックスなロボットが届いたとします」
「突飛なはなし~」
「そのロボットはとてつもなくカッコ良くて、美里の好みドンピシャな見た目です。しかもなんでもしてくれます。掃除洗濯、料理などの身の回りの世話から、生活費の工面まで全てやってくれます。男前ロボットはそれが自分の幸せだというのです」
「やっぱ主任ってあんたの好みドンピシャなんだ」
「た、たとえだよ、たとえ。ちゃんと想像してね。美里のためにだけ動いてるようなロボットだよ?」
美里は目を閉じた。私の話を頭の中に思い浮かべ、リアルに想像してくれているようだ。
「なんか、私は無理かも……料理とか、作りたい派だし」
「はあ!?」
私は思わず椅子に反り返って落っこちそうになった。
「そんなに驚くことなの?」
「くぁあ~!ばっかだね~美里ちん!なんっにも!しなくていいんだよ!?ぐーたらぐーたらやって遊ぶだけだよ!?小学生の夏休みだよ!?あの頃に帰りたくないっていうの!?」
「三日で飽きそう」
「そんなことないって!ゲームもネットも漫画もあるし!こんなに娯楽で溢れてんのに飽きるわけないじゃん!」
ついつい熱弁してしまったが「もういいから。さっさと続き」と急かされて、私は狭い椅子の上で姿勢を正した。
「じゃ、続きね。そんな美里だけに忠実なロボットがだよ?美里以外に興味なんてなさそうなロボットがだよ?ある日女の子と歩いてるとこを目撃しちゃうの」
美里が想像しやすいように少しを間をとってから、「どんな気持ち?」と顔を覗き込む。
彼女は、う~~んと小さく唸った。
「……いい気はしないかな?」
「それはロボットのことが好きだからですか?」
「……微妙なとこだね。好きだけど恋愛感情ではないかも。ロボットだしね」
「でっしょー!?そういうことなんだよ!さ、牛丼たーべよ!」
共感を得て満足し、割り箸をわる。
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