ドМ彼氏。

「男子会」

2

「やはり詩絵子様に似ていますね。きっと詩絵子様も同じ反応をすることでしょう」

「誰だってこうなるだろ！そんな面倒そうな話聞きたくねーんだよ！」

「そうでしょうか？いい大人がそんな駄々っ子みたいな反応するでしょうか？したとしても似合いまんせんよ。僕がするとイタイでしょう？」


　頭に、ぽわん……と耳を塞いでいやいやをする主任が思い浮かんでしまいました。


「キツイもんがあるわ……」

「そうです。しかしそれが普通なんです。お二人は駄々っ子が似合う奇跡の大人なんです」

「悪口だかんな、それ」


　しばし沈黙がありました。そうしてそこに正座している主任を見ていると、現状の奇妙さが際立ってくるようでした。


「なあ、ずっと気になってたんだけどさ」

「はい、この命は詩絵子様のものですのでかけられませんが、できる限りお答えします」

「……」


　……ま、いいや。ここはスルーで。


「前も聞いたけど、あんた俺のことどう思ってんの？」


　以前より不思議に思っておりました。朔の気持ちが詩絵子へ向いていることを知りながら、彼は咎めようとしません。それどころか、詩絵子と朔が一緒にいる場面を楽しんでいるように見えるのです。主任は答えました。


「詩絵子様の双子の兄です」

「それあんたの妄想だかんな！」

「シスコンです。かなりです」

「だからちげーって！」


　ほくほく顔の主任にしびれを切らし、朔は叫びました。


「俺はあいつが好きだって言ってんだよ！なんか言うことねーのかよ！」


　ずっと不思議でした。なぜ彼はなにも言わないのか。なぜ焦りをみせないのか。なぜ自分を相手にしないのか。

　主任は目を伏せて、少し笑いました。


「汐崎朔くん、真面目にお答えしますが」

「……やっぱ今まではふざけてたんだな」

「まず朔くんは、こう見えて紳士です」

「こう見えてってなんだよ」

「詩絵子様の心が自分に向かないうちは手を出しません。それをしても虚しくなるだけだと、あなたは知っているのです」


　そんなことはないけどな、と朔は思った。自分はそんなに優しいやつじゃないと。しかし思い返してみると、主任の言うとおり、何度もチャンスはあったにもかかわらず、一度も手を出すまでには至っていません。

　そんなつもりはなかったけれど、これまで朔は詩絵子に手をだすという選択をしてきませんでした。


「それともうひとつ」


　と続けて、主任は少し憎たらしく感じられる笑みを見せました。


「僕が詩絵子様を必要としているように、詩絵子様もまた、僕を必要としているからですよ」


　ずっと不思議だった。なんでこいつはなにも言わないのか。なんで焦りをみせないのか。なんで俺を相手にしないのか。

　ああ―――そうだよ。最初っからそうだったじゃん。こいつには、絶対的な自信があるんだ。


「それに朔くんと仲良しな様子を見ていると、胸が痛んで愉快になるというのもありますし」

「……」


　そして絶対的なドエム！不快感から快感を生み出す最強の錬金術師！！