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「デートしましょうよ」
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しおりを挟む「………………」
……無機質な会議室。……2人きりの静かな空間。……土下座の主任。
「僕のように何の才もないでくのぼうが、詩絵子様を呼びつける無礼、たいへん失礼いたしました」
「……」
分かってた……わかってたわかってたホントだよ?もしかしたら主任のホントのホントの正体はエスなのかもーなんて思ってないよ?思ってたとしてもちょっとだけだからね?
だってそんなことあるわけないじゃーん。今までどれだけ、この低い位置にある後頭部を見てきたと思ってんのよ。だよね~……。ドエムだよねえ……。
「先日、不躾ながら詩絵子様にお願いした社内アンケートなのですが……」
主任は申し訳なさそうに、土下座したまま一枚の紙に両手を添えて丁寧に床に差し出した。それは私が書いた社内アンケートだった。
Q1.あなたは入社して何年目ですか。
→万年
Q2.あなたは現在の仕事に満足していますか。
→やめたい
Q3.前問のように回答した理由をお聞かせください。
→俺は、ニート王になる!!
Q4.あなたは現在の仕事以外に、(社内で)やってみたい仕事がありますか。
→スパイ
Q5.あなたは現在の上司とコミュニケーションがとれていると思いますか。
→一方通行
Q6.あなたは現在の上司以外に、上司になってほしい人が(社内に)いますか。
→チンパンジーorコピー機
Q7.職場に対して悩みや要望がございましたら、ご自由にお書きください。
→漫画やアニメは日本の文化である。たとえ仕事中であったとしても、この伝統文化を禁止するような勤務形態に不満を感じています。みんなでアニメをみることのできるシアター室を構えるなどの対応を希望します。その際にはお菓子やジュースの無料配布、じゅうぶんな仮眠をとるために3時間休憩をつけるなど……(以下省略)
→あと、ストーカーをどうにかしてほしい
~ご協力ありがとうございました~
「これだめだったんですか?」
その場に膝をおり、ぺら、と紙を手に取る。
「……僕の判断で上への提出は避けました」
「ふ~ん」
「アンケートは僕が書いたものを代わりに出しておきました」
「へえ」
ん?じゃ、なんで呼んだの。
「詩絵子様……」
主任は心無しか暗い声を出す。
「はい?」
「チンパンジーですか……」
…………………………………。
「…………あー……」
そのことか。
「コピー機ですか……」
「……あー……」
「想像してみてください、詩絵子様……。僕が座っているあの席に、代わりにチンパンジーを座らせる……」
言われたように想像してみた。ぽん、と……主任がチンパンジーに成り代わる。……シュールだなあ。
「きっとバナナを欲しますよ。オフィスはむせ返るようなバナナ臭……そして食べ終わった皮を投げつけてくるでしょう。それにチンパンジーは握力も強い。成人男性の握力が48kgなのに対し、チンパンジーは200~300kgほどあります。凶暴な個体なら殺人が起こるケースもありえるのです」
「へえ~」
「次にコピー機ですね。コピー機をあの席においてみてください」
想像してみる。しんとそこにいるコピー機。
「なにも生まれません。オフィス内の配置が変わっただけです」
うん、まあ。そうだけど。
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