140 / 188
「変態VS変態VS変態」
1
しおりを挟む「はあ、はあ……よかった、追いつかれなかったみたい」
「ったく、あんな変態どもに付き合ってらんないよな。ほら、帽子も取ろうぜ」
私は黄色の帽子を脱いで、それでパタパタと顔をあおいだ。
「ふうー疲れたー。それにしても、ここってどこなんだろ?」
「どっかの山だろ。ちょっと落ち着いたら、街に戻ってタクシーで帰ればいいよ」
「そうだね。ていうかなんなの?あんたが連れてきた新種の変態は。超怖いんだけど」
「あー、涼子さん?恐ろしいよな。俺としたことが、こうも簡単に策にハマっちゃうなんて」
「朔が策に?」
「そうそう。朔だけに策に」
「……」
「……」
面白くもないことを言い合ったあとで、私たちはバカらしくなって肩を落とした。それからなんの気なしに、空を見上げてみた。
空はほとんど見えなかった。木枝と葉っぱたちが暗く風に揺れていて、隙間を埋めるようにある黒が、窮屈な空という景色があるばかりだった。
そこはかとない不気味な光景に思えて、急に汗が冷えるみたいだ。私はぶるるっと身震いをした。
「よ、夜の森って、チビ朔は経験ある?」
「えー?さすがに森でエッチはないな~虫とか寄ってきたらヤダし、体位も限られて、なんかしゅうちゅ…」
「ハアーーーアッ!!」
私は今日一番の気合をいれて、右ストレートを放った。
「なんだよなんだよ!今のはお前の聞き方に問題があるだろ!?」
「四六時中そんなことばっか考えてるから、なんでもそっち方向に聞こえんでしょ!なにナチュラルに答えてんのよ!」
「ナチュラルならいいじゃん!あ、そういえば、四六時中って、かけ算の4×6=24。つまり24時間、一日中って意味だってさ」
「へえー、なるほどねえ。そんな成り立ちがあるんだ」
「おいらの豆知識」
「……」
「……」
「……そろそろ戻るか?」
「……そうだね」
来た道を戻っていると、チビ朔が思い出したように言った。
「そういえばさ、変な夢みた」
「夢?」
「うん。俺とお前は妖精で、双子の兄妹なんだよ。そんで、ボノレルって木の樹液を求めて森を探索すんの」
「なにそのメルヘンな夢は」
「ボノレルの樹液はすげーんだぞ。空だって飛べるんだからな。ないかなーボノレルの樹」
チビ朔は辺りを見回し始める。そしてすぐに「わきゃー!!!」と叫んだ。
「きゃあー!!!なによなによ!!」
「なんかいる!なんかいるよ!!」
「や、やだやだ!!怖いこと言わないでよ!!」
それは蛇だった。
「な、なんだ、ただの蛇じゃないの。霊的なものかと思ったじゃない」
「へー蛇は平気なんだ?」
「幽霊さん様よりはね」
「なんでそんなへりくだった呼び方なんだよ」
「どこかで聞いてらっしゃるかもしれないでしょ。私は呪われたくないんだから」
チビ朔は蛇に近づき、木の棒でつついた。
「おー、怒ってる怒ってる、威嚇してくるぜ」
「あんたね、ランドセル背負ってそんなことしてると、本当に小学生に見えるよ」
「あー……これマムシってやつじゃね?」
チビ朔はしゃがみこんで、持っている木の枝に巻きついてくる蛇を観察する。
「へえー、蛇の種類なんて分かるんだ?」
私も隣にしゃがむ。
「まあな、ガキの頃はよく捕まえて遊んでたし」
「うっわー、すっごい想像つくね」
「昆虫博士とか言われてたしな」
「ヘビは昆虫じゃないじゃん」
「まあまあ、そんな細かいことはガキだから。今でもけっこう覚えてるぜ。なんでも聞いてみてくれよ」
「う~ん、そうだなあ……じゃあさ、このマムシって蛇はどんな蛇なの?」
「よしよし、昆虫博士がお答えしましょう。まず、これはかなり有名だけど、マムシは毒蛇だ。毒を持ってる」
「それくらいなら私も知ってるよ、マムシと言ったら毒蛇、毒蛇と言ったらマムシってくらいに……」
「……」
ギギギ……錆びた音が鳴りそうな動きで、私たちはぎこちなく顔を見合わせる。
『ど、毒蛇だぁああーーーー!!!』
マムシを放り、私とチビ朔は別々の方向に逃げ出した。そこで私たちは、夜の森ではぐれてしまった。
0
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
両隣から喘ぎ声が聞こえてくるので僕らもヤろうということになった
ヘロディア
恋愛
妻と一緒に寝る主人公だったが、変な声を耳にして、目が覚めてしまう。
その声は、隣の家から薄い壁を伝って聞こえてくる喘ぎ声だった。
欲情が刺激された主人公は…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる