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「最強のライバル?」
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しおりを挟む朔は一気に混乱へ陥りました。
「だ、誰だよお前!?あれ?小さい!てか軽っ!」
抱き上げてみると、彼女は軽かった。
「え、だれ?マジで誰なの?清水だよな?スモールライト手に入れたのかよ?」
それとも幻覚か?あー幻覚なら、ちょっと小さいのも納得だな。ちょっとだけ再現率が追いつかなかったんだな。
ていうか俺、幻覚にみるほど恋しかったのか?
「さくらだよ。さくらしおん」
「しおん?なに?君の名前?」
「うん」
「……はっはっは」
やべーな。この幻覚、自分の名前までつけてやがる。
やばいと思いましたが、本当にやばいのは彼の方でした。
「ところで何歳?」
とりあえず会話を進めます。彼女はちょっとつたなく指を折って、6才だと示しました。
「……歳まで詐称かよ。清水、大丈夫だって。俺もさんざんお前に幼稚幼稚って言った気がするけど、6才はさすがにない。せめて10才だ」
「詩音、しえ姉ちゃんキライなの。だってね、いじわるだもん」
「しえ姉ちゃんって……ああ、清水のことか。なるほど、嫌い合って二つに分裂しちまったのか」
「帝人はいいって言うのにね、しえ姉ちゃんばっかり好きにするんだよ。詩音知ってるもん。おとなげないって言うんだよ」
「おお、ちゃんとドエム彼氏の記憶も引き継いでんじゃん。俺は?俺のことも覚えてんだろ?」
自称『詩音』は朔をじっと見上げました。
「知らない」
これはショックでした。落ち込みましたが、すぐにその頬をつねります。
「……なんだと~~~」
「い、いだッ!」
そこで朔はハッとします。普通に触れるし、会話もできる。一瞬だけ幻覚とも思いましたが、幻覚ならまず触れないはずです。
ではこの異変にどう説明をつけようか?
そう―――記憶喪失だ。
なにか頭に強いショックを受けて、『汐崎朔』の記憶がころりと落ちたに違いない。そういえば、記憶喪失になる際、大事に思うものほど抜け落ちてしまう傾向にあると聞いたような気がしないでもありません。
ついでに自分のこともちょっと分からなくなっているのだろう。そうなると言動がいつもと違うのも、違う名前を言うのも頷ける。
体が小さくなったのは……よく分からないが、頭に強い衝撃を受けた名残りだろう。きっとそういう症状が出ることもあるのだ。
つまりだ。欠落した記憶を別のものにすり替えることも可能ではないのか?
朔は真剣な顔をつくって詩音の前にしゃがみ、その手を握りました。
「詩絵子。お前はさくらしおんなんて名前じゃない。清水詩絵子なんだ。そして俺はお前の彼氏だ。思い出してくれ。あんなに愛し合って」
「てんちゅぅうううう!!」
「ごぶッ!!」
おもくそ後頭部をはたかれ、朔は目ん玉が飛び出しそうになりがら、ベンチへ突っ込んでいきました。
「な、な……」
急いで起き上がる。聞き覚えのある声と思えば、清水詩絵子の友人である美里でした。彼女は朔をぶん殴ったと思われる武器のハンドバッグを肩にかけ直し、腰に手を当てました。
「バカ!あんたってばとんだバカよ!!なに刷り込もうとしてんの!よく見てみなさいよ!どう見たって小さいでしょうが!」
「へ……?小さいって……そんなことは俺だって気づいてんだよ!」
「じゃあ別人ってことにも気づきなさいよ!」
「はあ!?これは薬の副作用とかじゃねーの!?」
美里は盛大なため息をつきました。
「あっぱれ。あっぱれな想像力、アーンド思い込み。パチパチパチー。でもこの子はあんたの幻覚じゃなければ記憶喪失でもないし、なにより清水詩絵子じゃないのよ」
「え?」
「詩音ちゃん。私は詩絵子の友達だよ」
美里は詩音の隣に腰を下ろし、柔らかく言いました。
「なに?なにがどうなってんの?」
二人の前に立ち、朔は訳が分からず頭を掻きます。
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