ドМ彼氏。

秋月 みろく

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「最強のライバル?」

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「詩音が歌うの~~~!」


「私が先~~~!」


「まあまあ、お二人で歌える曲を選びましょう」



 カラオケに行けば、どっちが先に歌うかで揉めて。



「こっちのサンタさん乗ってるのがいい!」


「やだ!クリスマスケーキはノエルって決めてんの!」


「可愛いですね~本物の姉妹のようです。似ているといがみ合うんですねー」



 ケーキ屋に行けば、好みの不一致で論争。



「もう飽きた」


「次いこ」


「はい、ただいまっ!」



 イルミネーションを見に行けば、1分で飽きてしまい。



「いやだ~~!帝人は詩音と滑るの!」


「わ、私だって主任に捕まってないと立てないんだから!」


「お任せください。二人くらい支えられますので」



 スケートに行けば主任の取り合いになり、洋服を見に行けば、どっちの服を見るかでケンカになる。



「もうッ!詩音つまんない!しえ姉ちゃんばっかりずるい!」



 機嫌よく洋服を選んでいたところ、詩音はしびれを切らして地団駄を踏んだ。私は肩をすぼめて振り返る。



「でたでた。子供の勝手な言い分。ほんっとーに幼稚なんだから」



 詩音はムッとする。



「本当にしえ姉ちゃんばっかりじゃん!」


「そんなことないでしょ!このあとにあんたの服も見に行くんだから!」


「ママたちなら、いつも詩音の好きなところ見せてくれるもん!詩音こういうの知ってる、『おとなげない』っていうんだよ!」


「ハン!大人になった覚えなんてないからね!こっちは骨の髄までお子様ランチでやってきてんのよ!」



 詩音は顔を歪めて「うう~~~」と唸った。


 ははん。いい気味だ。自分を中心に据えて世界が回ってると思い込んじゃってんだから、これくらいは付き合わせて協調性を学ばせないとね。


 伯母さんも甘やかしすぎなんだよ。大人は自分の思い通りになると思ってる典型的な甘やかされて育った生意気な子供になってんじゃないの。主任を呼び捨てにするし、私が欲しいおもちゃは選ばないし、ぜーんぜん可愛くないんだから。


 私は詩音を見下し、決め台詞として言った。



「そうそう。最初っからそうやって大人しくしとけばいいのよ」



 ついに詩音は、その瞳いっぱいに涙をためて、体の前で服を握り締めた。


 あれ……やばい……?



「もういいッ!!詩音かえる!ママのとこに行く!」



 このあとの成り行きは、なんとなく想像できた。でも、私も引くに引けなかった。



「あっそー。勝手にすれば?」




 やっぱり詩音はその場を走り去った。


 しばらく小さくなっていく後ろ姿を見ていたけど、やがて人ごみに紛れて消えた。私は視線を振りはがして、洋服選びに戻る。



「ふ~~~んだッ。詩音がわがままなのがいけないんだから」



 でも、すぐ不安になって辺りを見回す。そういえば主任の姿もない。


 …………ハッ!


『この寿命すり減らしてでも、這いつくばって詩絵子様と詩音様にぴったりの衣装をみつけて参ります』


『わーい、ラッキー』



 主任の言葉を思い出す。


 そういえばそんなこと言ってた!正直、主任がなんとかしてくれると思ったから、追いかけなかったのに……!もお~~~!肝心なときにいないんだから!!



「詩音!」



 私は人ごみを掻き分けた。けれども、その小さな後ろ姿は、陽炎のように消えていた。



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