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「スキっつってんだろ!?」
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しおりを挟むそー……っとドアに隙間を開く。そこから冷たい風が滑り込み、ドアの向こうから生えたような手が、力強く私の手をつかんだ。
私は『わっ』と口を開き、けれども言葉は出ないまま硬直する。
「お嬢ちゃん……はあはあ、パンツ見せて……うへへ」
ひい!要求がグレードアップしてる!!
なんとかドアを閉じようとしたけれど、男は圧倒的な力でぐいぐいドアを開き、中へ入り込もうとする。
どうしよどうしよどうしよ……部屋に入られたら終わりだ。
私は力いっぱいにドアノブを引く。男はドアを開こうとする。そういう引き合いが続き、前後に動いていたドアは、次第に隙間を広げいき、男はとうとうその半身をドアの間に挟むようにして入ってきた。
「こ、こないで」
男はハアハア言いながら、私の手をドアノブから引きはがし、その体で私を中へとおしこめた。
ちょっと忘れていたけど、熱でふらふらの身体はあっさり倒れて尻もちをつく。そうして男はついに玄関へ入り、その後ろでドアが閉まり、完全に男と二人きりの密室が出来上がる―――
というところで、ドアが再び外から開いた。
「よお清水ー」
いつもの晴れやかな笑顔で現れたのは、まさかまさかのチビ朔だった。これには男も驚き、チビ朔を振り返って硬直する。
「えーなになに?誰?清水の知り合い?親戚のおじさんとか?」
この場にそぐわない、のんきな様子でチビ朔はたずねる。私は床に座ったまま、勢いよく首を横に振った。
「えーマジかよ」
そう言うチビ朔をおしどけ、男は無言で部屋を飛びだした。チビ朔がその後を追う。
私はぽかんとしたけれど、ややあってハイハイでドアを開け、そこから首を伸ばして様子を見てみた。
廊下の奥で、チビ朔が男に追いつきその肩をつかむ。男はチビ朔へ殴りかかる。チビ朔はそれをするりとかわして背中へ回り、鋭い蹴りを突き刺した。
廊下から男の姿は消え、階段を転げ落ちていく激しい音だけが聞こえた。私は思わず目を閉じた。
静かになってから目を開け、チビ朔の元へ向かう。首を伸ばしておそるおそる階段を覗き込んでみると、男がうつぶせで倒れていた。
チビ朔は「チッ」と舌を打つ。
「ふざけんじゃねーぞ変態が」
男は急いで立ち上がり、こちらを振り返りながら、もつれた足で走り去っていく。
「もう来るなよー!」とチビ朔は叫んだ。それから私に笑顔を向けて、その冷たい手でぐりぐりと頬をつまんだ。
「大丈夫かお前ー?ていうかなにあいつ?不審者?」
「たぶん」
私は呆けたまま答える。
「そっかそっか。俺がきて良かったな」
ぺしぺしと頬を叩かれ、私のふたつの目から、はらはらと涙が流れ落ちた。チビ朔はぎょっとする。
「え、どうした、そんな怖かったの?」
「……怖か、った……」
いきなり安心してしまって、嗚咽がこみ上げてくる。それを何とかこらえながら、絞り出すように答えた。
私が泣いてしまうと、チビ朔も切ないように眉をしかめた。そしてまた舌を打った。
「ッヤロー。やっぱあいつ仕留めて来るわ。二度とこねーように警察に突き出してやる」
「え、いかないでよ」
慌てて腕を引く。チビ朔は止まり、あっけにとられた顔で振り返る。
「お、おう、そっか。今ひとりは怖いよな。まあそんなに言うなら一緒に居てやってもいいけど」
「うん。そうして」
腕をつかむ力を込める。チビ朔は目を白黒させた。
「な、なんだよ。やけに素直じゃんか。ついに惚れちゃったか?」
「……かっこいい」
「え」
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