ドМ彼氏。

秋月 みろく

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「ドエムの住むところにロープあり」

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「こんなに赤くなっちゃって」



 チビ朔はどこか演技じみた仕草で、私の頬をつんとつついて、髪を撫でた。



「お前、すげーかわいい…」


「どいて!」


「ぶふっ!!」



 キメ顔でつやっぽい声を出していたチビ朔は、押しどけられて顔から電柱にタックルしていった。



 そうだったそうだった!早くしないと美里の乳が私以外のものになっちゃう!あんなチビに構ってる暇はないのよ!




「美里の部屋は……あそこか」



 生垣の裏に身を潜め、私はとあるマンションを見上げた。美里が住んでいるマンションだ。美里が彼氏といると思われる部屋には、電気がついている。



「ん~……来たのはいいけど…どうしよ…」



 頭の中に、いくつかの選択肢を並べてみる。


 パターン①

 何食わぬ顔でピンポンを押して部屋までいく→締め出される


 パターン②

 電話をかけて家まで着たことをそれとなく言ってみる→即刻通話が切られる


 パターン③

 悪漢に襲われて逃げてきたと嘘をつく→ばれる


 パターン④

 部屋の前で小一時間ほどだだをこねてみる→放置される



「ぐぬぬ~」


 こう考えてみると、美里ってかなり手強い女なんだなあ。どのパターンもかなりきつい結果だ。


 そんなに突き離れちゃったら、私のガラスのハートが粉々に砕けちゃうじゃない。私は主任みたいな極太精神じゃないんだよ。



「くそーどうにかマンションの前まで連れ出せれば……」


「それは難しいだろうなあ」


「!!!」



 唐突に横からした声に、私は思わず尻もちをつく。心臓がばくばくいって、口を空回りさせながら、目の前の人物をぶんぶん指をさした。



「な、ななななん……!」


「ななななん」



 私の台詞を繰り返し、チビ朔は腹を抱えて笑い出した。



「ぶははっはは!お前のその顔が見たくってさあ!つけてきたんだよはははは!」



 チビ朔は芝生の上をぐるんぐるんと転げり回り、ひーひー涙を流しながら思う存分に笑った。その様子を見ていると、だんだん驚きが怒りに変わってきて、私はチビ朔を歩道へ突き落した。


 チビ朔は「ぺけっ!」とまたもや顔から着地する。



「なにすんだてめえー!顔は商売道具だぞ!」


「なにすんだじゃないでしょうがっ!だいたいこれから出勤って言ってたじゃんか!」


「あー、こっちのがおもろそうだからサボった」



 生垣の裏に戻ってきながら、しれっと答える。



「い、いいの?そんな簡単に休んじゃってさ。仕事は信頼関係が大事だと思うな」


「いいんだよ。俺ナンバーワンだから色々と融通きくんだよね」



 私はまた口を開いた。


 こいつが?こいつが?ホストクラブのナンバーワン?



「へっ、あんたがナンバーワンのホストクラブなんて、程度が知れるわ」


「それよかなにやってんだよ。お前後ろから見てたら、不審者以外の何者でもないぞ」


「しょうがないでしょ!私の友達が部屋で彼氏といちゃこらやってんのよ!それで様子を見に……」



 スーーーっと、続きの台詞が空気中に溶けていく。私の視界に、ある人物が映りこんだ。


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