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追い出された理由

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その後、フェリックと女性4人組たちは酒場へたどり着いた。中は大勢の人で賑わっていて、少し大きめの声で話さないと、聞こえないほどだった。
  フェリックたちが席へつくと、胸元が大きく空いた制服を着た女性が水を運んでくる。そして、白髪の女性は酒を頼む。フェリックたちはサラダを頼んだ。酒場は何度か来たことはあるのだが、まだ慣れていないフェリックだった。視線を胸元から外しながら、小さく会釈する。
  白髪の女性は水をひと口含んで飲み下してから、口を開いた。

「さて、なぜ追い出されたのか⋯⋯と、聞きたいところだが、まずその前に自己紹介をしようではないか。まずはお前から頼むぞ」

「は、はい」

  フェリックは促されるまま、自己紹介をする。

「俺は、フェリックです。元勇者パーティーにいたけど、昨日追い出されてしまった者でもあります⋯⋯」

  フェリックが自己紹介をすると、白髪の女性は大仰に笑ってみせた。

「何もそこを強調しなくてもよいではないか。まぁいい。――私は、このパーティーのリーダーのカレンだ。よろしく頼むぞ」

「よ、よろしくお願いします!    カレンさん」

  その白髪の女性――カレンは、とても良いプロポーションが特徴な女性だった。白の装備を身に纏い、褐色肌、そして目はキリッとしていて凛々しく、口調も手伝ってか、大人びた印象を与えた。

「敬語は使わなくてよいぞ。名前もカレンでよい。次は誰だ?」

「はいはーい!    次は私だよー!」

  カレンが言うと、金髪の少女が手を上げながら立ち上がった。フェリックはいきなり大声を出されたため肩をビクつかせる。

「私はシャロリンっていうの!    どう!?    可愛いでしょ!?」

  そう言って目元にピースサインを当てながら顔を近づけてくるシャロリン。その勢いに気圧され、フェリックはこくこくと素早く頷く。 

「わぁありがとう!    気軽にシャロリンって呼んでね!」

「う、うん。よろしく、シャロリン」

「次は私なのだ!」

  そう言い出したのはシャロリンの隣に座るオレンジ髪の少女だった。

「私の名前はエリアンなのだ!    12歳なのだ!   ちなみに、カレンがエイリアン呼ばわりするけど、エイリアンではないのだ!」

  エリアンが頬をプクッと膨らませそう言うと、カレンが腿を叩きながら笑う。

「あ、あの、エイリアンって呼んでるのってもしかしてカレンなのか?」

「ああ、そうだ。可愛くて少しからかいたくなるのだよ」

「だからエイリアンじゃないのだー!」

  ぽこぽことカレンを叩く様子のエリアンに、フェリックは苦笑した。
  エリアンはオレンジ髪の少女で、背丈は低く、その満面の笑みや、口調からして、幼い印象を与えた。シャロリンと同じ、活発系女子だろう。
  そんなエリアンにフェリックは笑顔で挨拶する。

「エリアンもよろしくね」

「はいなのだー!」

「最後は私ですね!」

  そう言ったのはカレンの隣に座る、黒髪の少女だった。

「私は、ローレインと言います!    魔法は治癒魔法が得意です!    これから仲間になるフェリックさん!    よろしくお願いします!」

  そう自己紹介を終えた少女――ローレインは、お姫様のような印象を与えた。少し長めのサラサラの黒髪に、整った顔立ち。極めつけはピンク色の装備。まさにお姫様にぴったりだった。

「綺麗だな⋯⋯」

「え!?     あのあの、そんなこと急に言われると恥ずかしいです⋯⋯」

「あれ!     今俺口に出てた!?」

「もろ出ていたが⋯⋯」

  カレンが半目で言ってくる。どうやら心の声が出てしまっていたようである。今後気をつけようと思ったフェリックであった。

「ローレイン、よろしくね」

「はい!    よろしくです!」

「さて、自己紹介も終えたことだ。お互い聞きたかったことを聞くとしようか。といっても聞きたいことは両者同じだが」

「ああ、じゃあ俺から。なぜカレンたちは魔王討伐に成功したのに、パーティーを追い出されたんだ?」

「私たちは元からそういう契約なんだ」

「契約?」

「ああ、そうだ。私たちは元は奴隷でな――」

「ど、奴隷!?」

  思わず机を叩き立ち上がる。カレンからは静止の手を伸ばされた。
  奴隷。それは人でありながら雑な扱いをされる屈辱的な身分。
  しかし、フェリックはその奴隷について聞いたことがあった。ギルドの裏のシステム。それは、ギルドの裏の人間に金がなくて生活出来ないことを伝えると、裏の人間が高レベルの冒険者を捕まえ、その冒険者の奴隷にさせると。

「そんな驚かなくていいだろう。フェリック殿も知っているはずだ。このギルドの裏システムを」

  フェリックは知っていたため頷く。

「だけどなんでそんなところに⋯⋯」

「仕方のないことだ。私たちは実力はあるが金はない。そこでとりあえず奴隷身分になって耐え、金ができるまで奴隷を止めない。僥倖なことに、かなりの強さを誇るパーティーでな。魔王すら倒せてしまった。――まぁ当たり前のように再臨したがな」

「そ、そんな⋯⋯」

  フェリックには考えられなかった。
  こんな美少女なのに、奴隷という身分につくなど。金を稼ぐ方法はもっと他にあるだろうと。
  そんなことを考えていると、ローレインから声がかかる。

「あのあの、フェリックさんがそんな暗い顔しなくても大丈夫ですよ!     奴隷といっても、元いたパーティーは優しい方ばかりだったので!」

「そ、そうか。それならよかった」

  安堵の息を吐くフェリック。このローレインの言うことだ。きっと本当に優しい人ばかりに違いない。

「それで次は私たちから聞こうか。なぜフェリック殿はパーティーを追い出されたのだ?」

「ああ。俺は単に役立たずだったからだ」

「⋯⋯それだけか?」

「⋯⋯それだけだ」

『⋯⋯』

  その場に沈黙が訪れる。カレンもまさかそんな単純な理由で追い出されたとは思っていなかったのだろう。何か悪いことを聞いてしまったというような顔をしている。フェリックからしたら別にそんな深刻に捉えなくてもいいという気持ちだが、それはきっとお互い様だろう。

「ま、まぁそんなこともあるものだ。さぁ!    今夜は飲もう!    新たなパーティーメンバーの歓迎会だ!」

  高い位置にある窓から指す光はもう薄暗くなっていた。

「そ、そうだな!     飲もう!⋯⋯って!    俺金無いんだったー!」

「大丈夫なのだ!     お金ならいっぱいあるのだ!」

  すかさずエリアンがフォローを入れる。ナイスフォローだ。

「そ、そうだな!    また今度返せばいっか!    さぁ飲むぞー!    すみませーん!     骨付き肉も追加でー!」

  フェリックがそう追加の注文をしたときだった。シャロリンが何やら手を挙げて立ち上がる。

「シャロリン、どうした?」

「⋯⋯ちょっと御手洗行ってくるねー、あはははは」

  フェリックが言うと、シャロリンは苦笑いを浮かべそのまま御手洗の方向へと向かっていった。そんなシャロリンの顔色はかなり悪かった。

「カレン、なんかシャロリン顔色悪かったけど、大丈夫なのか?」

「大丈夫、いつものことだ」

「いつものこと?」

「ああ、それより飲もうぞ。さぁ乾杯」

「あ、ああ、乾杯」

  フェリックは気になったが、それ以上聞くことはなかった。
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