光の部屋、花の下で。

それから、

18

「え？　いや？　一緒に住んでる話は安西君から聞いてたけど、付き合ってることは初耳だよ」
　響野の問いに最初に答えたのは和田だった。初耳と言うわりには、彼のリアクションがもっとも無風というか、びっくりの“び”の字もない。
　天気の話をするような気軽さで受け止められたのは、和田が同性婚の法制化されている国に住んでいることと関係があるのだろうか。
　どことなくぽかんと聞いていた横山も、「俺も初耳だった」とつぶやく。
「でも……ごめん、俺は逆に、何かよくわからないっていうか……」
　画面の中の横山の口元が、もにょもにょと動いた。
「ふたりとも中学から知ってるし、しゃべっててもあまり変わんないし……恋人同士っていうより響野と水元にしか見えないんだけど」
　困惑したようにぱちぱちと目をまばたきしながら横山が言うので、リビングのソファに並んで腰かけていた響野と顔を見合わせた。
　不可解そうな相手の表情から察するに、響野には横山の言葉の意味がわからなかったみたいだ。
「伸也と俺なのは変わってないよ。……それでいいと思う」
　ディスプレイを見て答えたあと、俺の受け答えも横山に負けず劣らず意味不明だったように思えて付け加えた。
「考えようとしてくれてありがとう」
　液晶画面の横山は、もう一度、目をばちばちさせたあとで、「あ、うん」と応じた。
「じゃーまあ、乾杯すっか」
　最後は、おもむろに話に割り込んできた安西に全員が酒を持つよう促され、ビールの缶やワイングラスを掲げて乾杯した。