光の部屋、花の下で。

それから、

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　彼が滞在しているシンガポールでは、日本よりも外出規制が厳しいらしい。むやみに家の外に出ると逮捕されたり罰則を課せられたりすると聞いた。ほぼ自宅に軟禁状態だった彼が、気晴らしを求めて和田と横山にも招集をかけ、日程調整をしてくれたのだった。
　ひまを持て余し気味だったとはいえ、社会人になった安西は、フットワークが軽くて段取りも良かった。チャットアプリに次々と連絡が入ってくる様子は、中学の頃に学校をサボって空き教室で昼寝をしていた姿とは別人のようだ。
　安西の采配の結果、予定が合わなかったパンデミック以前が嘘のように、十日も経たないうちに同窓会が催された。つい先週のことだ。
　世界規模のウイルス災害が発生したおかげで、友達とゆっくり話す時間ができたというのも皮肉な話だった。
　響野と安西と横山の三人は、高校以降も付き合いを続けていたせいか、チャットアプリのやりとりや飲み会中の会話を見ていても、俺や和田より時間的な断絶が少ない印象を受けた。
　和田は受験時に三人とは進路が分かれ、高校在学中に海外留学をしたらしい――という話を、以前、響野からは聞いていた。
　本人いわく、留学先はオーストラリアで、そのまま現地の大学に進学し、今は野生動物の研究をしているそうだ。安西と再会したのは、フィールドワークでマレーシアのジャングルを訪問したときだったらしいが、本来の専門はオセアニアという話だった。
　感染症が拡がりはじめたとき、日本に緊急帰国するかどうかは、だいぶ迷ったらしい。今は大学のあるブリスベンに留まっている。状況が落ち着いたら研究を再開する予定でいるものの、まだその気配がないので、下宿している部屋から動けない、と言っていた。