光の部屋、花の下で。

それから、

14

　今の彼女には、もう幼すぎるかもしれない。まだ五歳だけれど、花音さんからは、最近はアスレチックのような本格的な遊具で身体を動かすことを好むと聞いていた。子供の成長はあっという間だ。
「和田が捨て猫を拾ったのって、この広場じゃないかな」
「そうなのか？」
「ずいぶん前に教えてもらった気がする。……そうか、伸也はいなかったっけ」
　彼の家に遊びにいく途中に聞いた話だった、と思い出す。
　夏休みの一日、公園の門の前で待ち合わせて、四人で響野の家に向かった。公園の木々から夕立のように降りそそいできた蝉の声が、つかの間、耳の奥によみがえる。
「和田は元気そうだったな」
　牧歌的な遊具広場をながめながら響野が言った。
　同じように広場を見たまま、「うん」と答える。
「和田も、みんなもね」
　俺が響野と再会した頃、安西も海外の仕事先で和田とばったり遭遇したらしい。せっかくだから横山も含めて会おう、と話がまとまるまでに時間はかからなかった。
　といっても、それぞれが仕事やら何やらで忙しくしていたのと、海外在住者がふたりもいるので、日程調整は少しもはかどらなかった。
　ようやく五人そろって会うことができたのは、新型ウイルスが流行してからだ。“会う”と言っても、ビデオ会議ソフトを使用して、パソコンの画面上でのことだった。
　パンデミック後は、ほとんどの国や地域で外出が制限されたため、直に対面できない家族や友人とビデオ通話をすることが世界的にはやっていた。オンライン会議用のソフトを使い、複数人で飲み会やパーティーのようなイベントを開くのだ。
「俺たちもこれをやればいいんじゃないか？」と提案したら、真っ先に食いついてきたのは、意外にも安西だった。