光の部屋、花の下で。

三尾

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それから、

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 名古屋から引っ越してきて、まだ一年半。こちらで勤めはじめた特別養護老人ホームとくようの仕事も同じくらいの期間で、けれども、もう引っ越すことを考えていた。加えて、俺のほうは転職も。
 動くとしても早すぎるかもしれない。あるいは、動くつもりならもっと早くにそうするべきだったと思わなくもなかった。
 思い悩む日々がはじまったのは、半年前に由香里ゆかり先輩の施設がオープンしたという知らせを受けたからだ。
「色々あったけど、無事に開所できました」
 相手から連絡を受けて、一度、開所祝いの挨拶と施設見学に行った。響野も一緒に、というよりはむしろ、由香里先輩に彼を紹介するついでに施設にも顔を出した、と言ったほうが正しい。
 真新しい自分の施設を案内するあいだ、先輩は終始ニコニコしていて、響野には「本当はあの施設が転職の本命だったんだろう?」などと言われた。……図星だ。
 もしもそうなら?と聞いたら、応援してくれるという。
「やりたいことがあるなら、実現の方法を探ってみるのは悪いことじゃない、と思う」
 思いがけない言葉に驚いたのが、つい昨日のようだ。
 まだ新型ウイルスの流行も、緊急事態宣言による外出自粛も起きていない頃だった。
 応援する、という言葉の通り、響野はそれから自分のリモート業務の割合を増やして、どこでも働ける環境を整えようとしてくれた。俺も、もっとも影響が出ない方法で今の職場を退職するタイミングを見計らっている最中だった。
 あのまま何事も起こらなければ、今頃は引っ越しもすんで、新しい土地で彼と暮らしはじめていたかもしれない。
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