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七日目
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「これから家にくるの? 今日?」
スリッパに足を突っ込みながら、とりあえず一番気になったことを早口でささやく。
「その予定だったけど、難しいだろうからことわっておくよ」
同じように多少早口になりながら響野は応えた。
「水元がうちにいることは、もう話してある。驚いてたぞ」
「そりゃそうだろうな……」
元気そうだった?と重ねて聞こうとして、戸口の前で看護師がじれったそうに身じろぎをするのが見えた。
「じゃ、あとで」と話を切り上げ、そそくさと出入口に向かう。
看護師のあとについて通路を歩きながら、もしかすると、あわただしいのは入院生活がそういうものだからではなく、自分の周囲で色々な出来事が起こりすぎているせいではないかと考えた。
看護師はエレベーターの前まで俺を案内すると、階下にあるという診察室の位置を説明してナースステーションの方向へ去っていく。てっきり診察まで同行するのかと思っていたら、受け持ちのフロアが違うようだ。
ボタンを押して、何基かあるエレベーターの階数ランプを目で追いかけた。中の一つが停止して扉が開く。
降りてくる人々は、ひと目で医療関係者ではないとわかる私服姿だった。病棟の見舞客だろうと検討をつけたとき、人影の中におやじを見つける。向こうもすぐに俺に気付き、「おお、ひー坊」と声をあげた。
予想よりも早い到着だ。そんな気持ちで挨拶を返そうとした瞬間、おやじの背後から小さな人影が飛び出して「ひーくん!」と脚に抱きついてきたので、思わず声をあげるほど仰天した。
「万里!?」
「でんしゃにのったよー! パパとママと。しんかんせん!」
スリッパに足を突っ込みながら、とりあえず一番気になったことを早口でささやく。
「その予定だったけど、難しいだろうからことわっておくよ」
同じように多少早口になりながら響野は応えた。
「水元がうちにいることは、もう話してある。驚いてたぞ」
「そりゃそうだろうな……」
元気そうだった?と重ねて聞こうとして、戸口の前で看護師がじれったそうに身じろぎをするのが見えた。
「じゃ、あとで」と話を切り上げ、そそくさと出入口に向かう。
看護師のあとについて通路を歩きながら、もしかすると、あわただしいのは入院生活がそういうものだからではなく、自分の周囲で色々な出来事が起こりすぎているせいではないかと考えた。
看護師はエレベーターの前まで俺を案内すると、階下にあるという診察室の位置を説明してナースステーションの方向へ去っていく。てっきり診察まで同行するのかと思っていたら、受け持ちのフロアが違うようだ。
ボタンを押して、何基かあるエレベーターの階数ランプを目で追いかけた。中の一つが停止して扉が開く。
降りてくる人々は、ひと目で医療関係者ではないとわかる私服姿だった。病棟の見舞客だろうと検討をつけたとき、人影の中におやじを見つける。向こうもすぐに俺に気付き、「おお、ひー坊」と声をあげた。
予想よりも早い到着だ。そんな気持ちで挨拶を返そうとした瞬間、おやじの背後から小さな人影が飛び出して「ひーくん!」と脚に抱きついてきたので、思わず声をあげるほど仰天した。
「万里!?」
「でんしゃにのったよー! パパとママと。しんかんせん!」
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