光の部屋、花の下で。

三尾

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七日目

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 腕時計の時刻は午前七時すぎを指している。ふたりとも働いているから、今ごろは出勤の支度と継妹いもうとの保育園の準備で忙しいだろうか。
 受話器の向こうの呼び出し音に耳をすませていたとき、ふと、今日が日曜であることに気が付いた。
 あ、と思わず声がもれる。平日でないなら、これほど早い時間にかける必要はなかった。
「はい?」
 受話器を置く前に、受話器に空いた細かな穴から声が聞こえてくる。
「おやじ? 俺だけど……」
 もう一度、受話器を耳に当てながら、そういえばこういう詐欺の手口があったよなと無関係なことを考えた。公衆電話から家電にかけるなんて、われながらとても怪しい。といってもオレオレ詐欺のまねごとをしたかったわけではなく、夜のうちにスマホが完全に逝ってしまったので、おやじの携帯電話番号がわからなかったのだ。
「ひー坊か? 何だよ?」
 応えるおやじの声は眠そうだったけれど、電話主が俺であることを疑う気配はみじんもなかった。それはそれで不用心な気がして心配になる。
 偽物だったらどうするんだよ?、と忠告したいのをこらえて本来の用件を伝えた。自分が神奈川にきていることと、ゆうべ起きた脱線事故に巻き込まれて病院にいること。
 なるべく要点をかいつまんで手短に話したつもりだけれど、県をまたいでかけているせいか、電話機に投入した硬貨の残り金額がどんどん少なくなっていくのに驚いた。
 ディスプレイの残高が減るにつれて、寝起きだったおやじの声からも眠たげな響きが急速に薄れていく。
「それで、おまえ……大丈夫なのか?」
「大丈夫、大丈夫。もう普通に歩いてる」
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