光の部屋、花の下で。

三尾

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七日目

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「何か別の連絡手段を考えないとな」
 スマートフォンを返そうとした響野の腕が、俺の手から少しずれた方向に伸ばされる。
 気付かなかったふりをしてスマホを受け取り、「公衆電話を探してみるよ」と請け合った。
「何かあったら、俺から電話するから」
「わかった」
「あと、本当にありがとう、今日きてくれて」
 見上げると響野は黙ってうなずく。音が鳴りそうなほどの強い視線はもう返ってこない。それが寂しくて、身体の横に下がった彼の手をつかんだ。
「キスしてもいい?」
 黒い目がまたたく。ややあって、彼はベッドの方向に踏み出した。動いた拍子に脚に椅子が当たってバランスを崩しそうになる。とっさに相手を支え、「大丈夫か?」とたずねた。
「今、見えてないんだ」
 焦点の合わない目で響野は答える。電話で話したときも、一瞬だけ見えてすぐにぼやけたと言っていた。治りかけだから視力が不安定なのだろうか。
「また回復するかな」
 俺の問いに、考えるような一瞬の沈黙のあと、「だといいな」と響野は応じた。握っている手を向こうからも握り返してくれる。
「……きて」
 腕を引いて彼を誘導した。相手の顔が降りてくるのを待ちきれず、うなじに手を回して口づける。
 渇望を感じた。ゆうべもけさもふれたのに、このまま彼をベッドに組み伏せ、貪り尽くしてしまいたい。
 渦巻く衝動をこらえて、努めてやさしくキスを交わした。飢えにも似た欲望を満たすよりも、今は相手をいたわりたかった。
 ……だって、この世にはひどいことが起きる。
 思わず運命を恨みたくなるようなひどい出来事が。
 重なった唇をずらしたとき、自分の頬が温かいもので濡れているのに気が付いた。両目を開け、視界に映った泣き顔に目を見張る。
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