光の部屋、花の下で。

三尾

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七日目

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 病院で意識が戻ったとき、最初は自分の置かれた状況がよくわからなかった。
 固いシーツの感触と消毒液の匂いにくるまれながら目を開ける。身動きした拍子に頭と背中の一部がにぶく痛んだ。
 見覚えのない場所にいることであまり動転しなかったのは、周囲の様子がどう見ても病院だったせいかもしれない。
 消毒液の匂いも、白くてごわつくシーツにも既視感があった。腕からは点滴のくだが伸びていて、ベッドのわきに立った白衣の人影が、その管の先端にくっついた点滴バッグを何やらセットしている。
 看護師らしい人影は、俺が目を覚ましたことに気付くと、「気分はどうですか?」とたずねてきた。
「今、先生を呼びますね」
 枕元のナースコールで業務連絡を入れる相手を尻目に、そろそろと頭を上げて周囲を観察する。
 自分が寝ているのは六畳程度の広さの病室だった。個室らしく、ベッドのほかに簡易式の洗面台と小型のテレビが備え付けられている。
 ほどなく部屋にやってきた医師は、診察をしながら、俺がこの病院に運び込まれるまでの経緯を話した。
 乗っていた電車が脱線事故を起こしたことを、そのとき初めて知った。踏切の付近でトラックが立ち往生し、ブレーキが間に合わずに衝突したらしい。
 車内で体験した、耳をつんざくようなブレーキ音と激しい揺れを思い出した。宙に投げ出された瞬間のふわりとした浮遊感がよみがえり、腕や背中の皮膚が広範囲に粟立あわだつ。
 医師の話では、けがの具合は軽症だった。打撲が数箇所で、目立った外傷もない。ただし、頭部を強く打っているから、念のために検査入院をしたほうが良いと言われる。
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