光の部屋、花の下で。

三尾

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六日目

26

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 〈外〉の世界では、障害者に積極的に関わろうとしない人が多い。街中などは、ほとんどがそうだと言っても過言ではない。それでも多くの人は、あえて不親切を働きたいとも思っていないのだろう。
 社会的な良識と乾いた無関心は、矛盾なく存在する。
 女性の歩みに合わせてゆっくりと相手を優先席まで誘導した。彼女は杖を軽く当てて座席の位置を確かめる。手すりの位置を教え、相手が腰を下ろすまで見守った。
 お互いの降車駅を申告しあうと、女性のほうが先まで乗っていくことがわかった。
「看護師さんですか?」
 短い礼を言われたあと、そんな質問を受ける。
「いいえ。でも、介護士をしています」
 俺の返答を聞いた女性は「ああ、それで」と納得したようにうなずいた。
「雰囲気がね、どことなく。専門の職業の方かなと思ったものですから」
「そうですか? 働いてるのは介護施設です、高齢の方向けの」
 このあいだ辞めましたが、という説明は、話をややこしくしそうだったので言わなかった。過去の自分が特養で働いていたことは事実だし、このまま行けば新しい勤め先も介護施設になるだろうから許容範囲だと思うことにする。
「視覚障害の方向けの訓練は受けていないので、もし、何か失礼があったら教えてください」
「まあ、とんでもないことです」
 相手の表情からは、ホーム上で声をかけたときの強ばりがだいぶ取れていた。
 会話をするとき、相手の声の方向に顔を向ける。そういうちょっとした動作が、響野を彷彿ほうふつとさせる。
「自分の身近に、最近、急に見えなくなってしまった人がいて」
 ふと言葉がこぼれた。
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