光の部屋、花の下で。

三尾

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六日目

18

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 話しながら、自分の首から上が熱くなるのを感じる。勢いにまかせて言ってしまったけれど、認めるのも、それを本人に伝えるのもひどく気まずい。
 俺は最初からそのつもりだったんだろうか。見えない響野のそばで、欲望にぎらついた視線を彼に送っていたのか。
 電話向こうでは、響野が何度目かの沈黙をした。
「それは――たぶん俺にもあったから、お互い様だな」
 一瞬、意味をつかめなくてまたたく。何か言おうと口を開いたものの、言葉も思いつかなくて、ただ息を吐いた。
 は、とこぼれた息は、そのまま笑い声に変わる。本格的に笑いはじめる前に手で口元を押さえた。
 響野に会いたい。スマートフォンごしではなく、生身の彼に、今すぐ。どうして人間は瞬間移動ができないんだろう。
「目が治ってきてるかもしれないんだ」
 バス停に戻ろうとしたとき、そっと打ち明けるように言われた。一瞬だったけれど、けさも水元の姿がはっきり見えた、と。
「怖いんだ」
 心が軽くなった直後に言われて、頭がついていかなかった。思わず、「え、何が?」とたずねる。
「……治るのが怖い……」
 びっくりしているうちに、目の前をバスが通りすぎていった。
 一瞬、バス停に注意が向きかける。でも、ぽろりと弱音を吐いたきり黙っている相手をそのままにもできなくて、停車したバスにぞろぞろと吸い込まれていく乗客をただ見送った。
 遠くに波の音を聞きながら、再びスマホを耳に当てる。こうなったら、とことん相手に付き合おうと思った。海の方向に身体を向けると、傾きかけた太陽を反射して水平線が光っている。
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