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六日目
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帰りのバス停へたどり着く前に、由香里先輩には仕事関係らしい相手からの電話がかかってきた。その場で彼女と別れ、県道沿いを歩く。
まっすぐ行けばいいと教わった通り、いくらも進まないうちにポールのみの小さな停留所が見えてきた。
土曜日の午後、海を散策して駅方面へ帰る人々がポールの前に列を作っている。
車道を走る車の台数は増えていて、道幅の狭さもあってか、渋滞がはじまっているようだった。行列の最後尾へ並ぶと、水平線は周囲の建物に隠れて視界から消える。
時刻表を見ようとスマホを取り出して、響野からのLINEが入っていることに気が付いた。
『何時頃帰る?』
相変わらず、極限まで言葉を削ぎ落とした簡潔なメッセージだった。恋人同士になったからといって、ハートの絵文字などが追加されたりはしないらしい。
『今バス停にいるよ。帰りのバスを待ってる』
返信をタップしてから時計を見ると、いつのまにか三時を回っていたので驚いた。造成地を見たり、小料理屋で話し込んでいたりしたせいか。
『六時頃にはそっちに着くよ』
目の前の道路の渋滞も見ながら、余裕を持った時間を答える。
ふと思い立って、先ほどスマホで撮った写真も送った。
『見える?』
既読がついてから、『海か?』と返信がくるまでしばらく間が空いた。メッセージの読み上げを聞く時間がタイムラグになっているのだろう。
『うん、きれいだった』
画像の中身は伝わったようだ。そのことが嬉しくて、口元がゆるむ。
また少し間が空いたあとで、相手からメッセージが届いた。
『電話してもいいか?』
その直後に、もう一通。
『バスがまだこないなら、話したい』
まっすぐ行けばいいと教わった通り、いくらも進まないうちにポールのみの小さな停留所が見えてきた。
土曜日の午後、海を散策して駅方面へ帰る人々がポールの前に列を作っている。
車道を走る車の台数は増えていて、道幅の狭さもあってか、渋滞がはじまっているようだった。行列の最後尾へ並ぶと、水平線は周囲の建物に隠れて視界から消える。
時刻表を見ようとスマホを取り出して、響野からのLINEが入っていることに気が付いた。
『何時頃帰る?』
相変わらず、極限まで言葉を削ぎ落とした簡潔なメッセージだった。恋人同士になったからといって、ハートの絵文字などが追加されたりはしないらしい。
『今バス停にいるよ。帰りのバスを待ってる』
返信をタップしてから時計を見ると、いつのまにか三時を回っていたので驚いた。造成地を見たり、小料理屋で話し込んでいたりしたせいか。
『六時頃にはそっちに着くよ』
目の前の道路の渋滞も見ながら、余裕を持った時間を答える。
ふと思い立って、先ほどスマホで撮った写真も送った。
『見える?』
既読がついてから、『海か?』と返信がくるまでしばらく間が空いた。メッセージの読み上げを聞く時間がタイムラグになっているのだろう。
『うん、きれいだった』
画像の中身は伝わったようだ。そのことが嬉しくて、口元がゆるむ。
また少し間が空いたあとで、相手からメッセージが届いた。
『電話してもいいか?』
その直後に、もう一通。
『バスがまだこないなら、話したい』
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