光の部屋、花の下で。

三尾

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五日目

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 それでもふたりで服を脱いで浴室に入ると、とたんに響野の緊張が増したことがわかった。彼だけではない。俺だって、“初めて”の相手とするのは初めてだ。
 視界がやけに白々として意識がふわつく。風呂場の照明はこんなに明るかっただろうか。心臓も先ほどからずっと激しく動きっぱなしで、鎮めようとする努力はしばらく前から放棄していた。
 目の前に、シャワーから立ち上る湯気と、汗ばんだ響野の皮膚がある。
 緊張をほぐそうと、お互いの肩や腕に軽く手を這わせ、ときどきキスを交わした。響野の目から強ばりが取れてきたところを見計らって、「どうしたい?」とたずねる。
 彼は意味がわからないという顔でぽかんとした。行為については、かなり具体的に説明したつもりだったけれど、自分がどちらをやりたいかは考えていなかったらしい。
 大丈夫かな……と心配になりながら、無理に最後までしなきゃいけないわけでもないし、と自分を納得させる。
 もしも途中で相手が怖がったり、ためらったりしたら、どの段階であっても絶対にストップしようと決めていた。
 シャワーを止めたあとの浴室は、湯気が充満してひどく熱い。響野の身体も。
 女性経験はあるという話だった。最後は大学生のときらしい。俺はどうだと聞かれたので、「したことない」と正直に言う。
「どっちも好きになる人もいるけど、俺は男だけみたいだ。それは、けっこう早くに気が付いたよ」
「いつ?」
「中学生のとき」
 響野が考え込む気配を感じた。沈黙のあと、「好きなやつがいたのか?」と彼はたずねる。
「うん、いた」
 うなずきながら、湯気のせいだけではない熱さで汗がにじんだ。
「同じ人を今も好きだ」
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