光の部屋、花の下で。

五日目

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　やっぱりテレパシーが必要だ、と思いながら、飽きるほど繰り返した問いを、また自分の中で反復する。俺はどうしたいのだろう？と。
　だけど、もういい加減、考えることにも疲れた。どれだけ考えても納得のいく答えが出ない。それがさんざん考えて出た唯一の答えらしきものだ。
「響野が俺の意見だと思ってるのは、俺の意見じゃないよ」
　あきらめて口が自然にしゃべりたいように任せると、当然のごとくすなおな言葉がもれる。
「……心配してる」
　誤算は、すなおになったのが言葉だけではなかったことだ。廊下で響野にふれたときのように勝手に腕が動いて、うつむき加減にたたずむ彼の肩に回る。
　抱きしめる寸前、ふと力を抜いた。力任せに抱きしめたら逃げたくても逃げられないかもしれないと思ったからだ。どうするかは響野に選んでほしかった。自分の気持ちを曲げたわけではなく――相手に選んでほしいと思ったのも含めて俺の意思だった。
　響野は逃げなかった。ゆるく肩に回された腕の中で、力を抜いて俺の肩に頭を預けてくる。
　ふれ合った部分に響野の熱を感じた。肩に乗った頭の重みと、襟元に当たる息づかいと、背中に回された腕と。超能力者でなくても抱きしめている相手の心を読み取れそうだ。
　Ｔシャツの襟からのぞく響野の首に手を置いて、うなじの短い髪をかき上げた。手をずらして相手の耳、頬と撫でていくと、肩にうずまっていた顔が上を向く。
　焦点の合わない黒い目を見ながら顔を近づけた。唇がふれ合う直前に、響野はようやく何が起きているかを察したらしい。黒いまつ毛に覆われた両目があわただしく閉じられ、まぶたがかすかにふるえる。