光の部屋、花の下で。

三尾

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五日目

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 もしかしたら、かたちにしたくないのは彼も同じなのかもしれない。
 言葉代わりの行為に没頭するうちに、浮かびかけたいくつかの言葉は、最初から存在しなかったかのように流れ、消えていった。


 高校が冬休みに入ると、昼の時間が空くようになったので、バイトに入る日数を増やした。
 年末から年始にかけてのホームセンターは、“常時人手不足”と言っても過言ではなく、高校生でも出ると言えば歓迎されたし、時給にも多少は色がついた。
 アルバイトのシフトと一緒に、なぜかノアさんと会う機会も増えた。出勤前やバイト上がりの二、三時間ほどを彼の部屋ですごすだけでなく、休日を丸ごと使って日帰りで出かけることが増えていた。
 地元の町は特に見るべきものもない山間部にあったけれど、国道や高速道路を使って太平洋側へ出れば、海沿いには県を代表するメジャーな観光地が連なっている。
 伊勢神宮や熊野古道には学校の校外学習で訪れたことがあった。ノアさんの部屋でそんな話題になったとき、彼は県民のあいだでは有名らしい地名を何箇所か挙げて、俺がどこにも行ったことがないとわかると、何とも微妙な顔をした。
「若いうちは、もうちょっと遊んだほうがいいぞ」
「学校は普通に楽しいですよ。でも、仲の良いやつらは最近まで部活で、土日も忙しかったから」
 ばあちゃんもいたし、ということは言わないでおく。本当はそれが理由の大部分を占めていた。でも、言っても仕方のないことだった。
「まあ……過去は変えられないから、今を生きろよ」
 そんな映画のタイトルみたいなことを言った次の日に、ノアさんは携帯メールで地名のリストを送ってきた。行ってみたい場所があれば連れていけるけど、どうだ?と。
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