光の部屋、花の下で。

五日目

41 ※

　欲情でかすかに開いた相手の口から白い歯が覗いていた。首筋を噛まれたときの硬さと甘い疼きを思い出し、喉元に牙を立てられるところを想像したとたん、頭の中で光が弾ける。
「あっ……あああぁっ……あぁ……」
　いく、と告げる間もないまま、腹の上で跳ねていた屹立の中を快楽が走り抜けていった。先端から白濁がほとばしり、彼と自分の下腹部を濡らす。
　激しく律動していたノアさんがぴたりと動きを止めた。俺の中に深く自分を入れたまま、彼はぐっと一回膨張したかと思うと、かすれた呻き声をあげて果てる。
　小刻みに続く射精の刺激に、いったばかりの俺の身体が二度目の絶頂を迎えた。予期せぬ快楽に視界が真っ白に染まり、全身から力が抜けていく。
　すべてを吐き出したノアさんが四肢を弛緩させて俺の上に覆いかぶさってきた。背中に腕を回し、きつく抱きしめられる。
　セイ、と呼ばれた。
　彼だけが口にする俺の名は、朦朧とした頭に甘く響いて染み込んでいく。
「……ノアさん」
　お返しのように呼び、おずおずと背を抱き返すと、顔を上げた彼と目が合った。疲れた顔が満足げに微笑む。本心をしまい込む、いつもの笑顔だった。
　何か言わなければと思う。何か、今しがたの行為の先に続くような言葉を。
　でも、すでに平常を取り戻しつつある彼を前に、どんな言葉もかたちを結ばない。
　もっと言えば、かたちを与えてしまうことが怖かった。
　ノアさんが無言で顔を近づけてくる。汗が浮いた俺の唇を舐め、前歯の隙間から舌を差し入れた。
　性交の余韻をなぞるように今度はお互いの口で相手を貪り、交じり合う。