光の部屋、花の下で。

三尾

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五日目

31

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「バイト何時まで?」
 ぼんやりと相手を見ていた俺の手から二枚の紙片とクレジットカードを抜き取ると、彼は人なつこい笑顔になってそう聞いた。
 ノアさんと性的な関係を持つようになるまでに時間はかからなかった。俺の好奇心や欲望は、驚くほど正確に相手に見抜かれていた。
 その日、バイトが終わったあとで、待っていた彼と連絡先を交換し、次の休みに会う約束をした。当日、車で迎えにきたノアさんと駅前で合流した数時間後には、ドライブ先のホテルで初体験をすませていた。
「何て読むんだ? “セイ”?」
 携帯電話に登録した俺の名前を見て、彼がそうたずねたのは、挿入するほうとされるほうを一回ずつ終えたあとだった。
「どっちをやりたい?」と最初に聞かれ、「抱くほう」と答えるとリードしてくれた。二回目は「俺も抱いていい?」とノアさんにねだられたので受け入れた。
「どっちも覚えておいたほうが便利は便利だよ」
 そんなもっともらしい理屈で相手に言うことを聞かせてしまえるのだから、得な性分だと思う。
 彼とのセックスは気持ちが良かった。でも、抱かれたあとは下半身があちこち痛む。ベッドに寝そべって、明日は学校大丈夫かなと考えた。
「ヒジリです。けど、セイでいいです」
「何で? ヒジリならヒジリだろ」
「ヒジリってガラじゃないので」
 セイもですけどね。相手に突っ込まれる前に自分で言うと、ノアさんはそんな俺をじっと見て、「じゃあ、セイって呼ぶよ」と応えた。


 地元には男同士で利用できるラブホテルがなかったので、それ以降、会うのはもっぱらノアさんの部屋だった。
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