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五日目
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「俺、ここのアルバイトなので……言っていただければ、在庫とか調べられます」
補足の説明を加えると、彼は正面から俺を見て「知ってる」と応える。
意外な返しに、今度は俺のほうがまたたいた。
「最近入った人だよね、大学生?」
「いえ高校で」
「ふうん、何年?」
「三年です」
「そうかー。しっかりしてそうだから二十歳は超えてるかと思った」
屈託のない笑顔を向けられて戸惑う。至近距離で顔を合わせてみると、遠くからながめていたときほどは似ていないことがわかった。
快活で明るい、いかにも人慣れしていそうな物腰。黒い瞳は切れ長というより、もっとくっきりと弧を描いていて、精悍な顔立ちに似合っている。肉食獣めいたその両目が、笑うと急に目尻が下がってやさしげな印象に変わった。動いた拍子に身体からかすかに煙草の匂いがする。
「ラッチを探してるんだけど、消音タイプってこれだけ?」
棚を指さして聞かれたけれど、そもそもラッチに関する知識がゼロだったので、すみやかに白旗を上げて相手をサービスカウンターへ案内した。俺が探していた戸車は、現物を見た彼が十秒もしないうちに「これじゃない?」と見つけてくれたので、よけいに情けなかった。
店の端末で調べると、相手の求める商品は、在庫こそないものの取り寄せできるとわかった。
「どうしますか?」とたずねる俺に、「頼めるならお願いする」と彼は答えた。
「じゃあ、入荷したらご連絡します」
取り寄せ伝票に書かれた“前原ノア”という名を見下ろしながら請け合う。相手は礼を言って店を出ていき、俺も戸車の代金を精算してから自転車に乗って家へ帰った。
それが、ノアさんとの直接的な出会いになった。
補足の説明を加えると、彼は正面から俺を見て「知ってる」と応える。
意外な返しに、今度は俺のほうがまたたいた。
「最近入った人だよね、大学生?」
「いえ高校で」
「ふうん、何年?」
「三年です」
「そうかー。しっかりしてそうだから二十歳は超えてるかと思った」
屈託のない笑顔を向けられて戸惑う。至近距離で顔を合わせてみると、遠くからながめていたときほどは似ていないことがわかった。
快活で明るい、いかにも人慣れしていそうな物腰。黒い瞳は切れ長というより、もっとくっきりと弧を描いていて、精悍な顔立ちに似合っている。肉食獣めいたその両目が、笑うと急に目尻が下がってやさしげな印象に変わった。動いた拍子に身体からかすかに煙草の匂いがする。
「ラッチを探してるんだけど、消音タイプってこれだけ?」
棚を指さして聞かれたけれど、そもそもラッチに関する知識がゼロだったので、すみやかに白旗を上げて相手をサービスカウンターへ案内した。俺が探していた戸車は、現物を見た彼が十秒もしないうちに「これじゃない?」と見つけてくれたので、よけいに情けなかった。
店の端末で調べると、相手の求める商品は、在庫こそないものの取り寄せできるとわかった。
「どうしますか?」とたずねる俺に、「頼めるならお願いする」と彼は答えた。
「じゃあ、入荷したらご連絡します」
取り寄せ伝票に書かれた“前原ノア”という名を見下ろしながら請け合う。相手は礼を言って店を出ていき、俺も戸車の代金を精算してから自転車に乗って家へ帰った。
それが、ノアさんとの直接的な出会いになった。
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