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五日目
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「人が死ぬと馬鹿みたいに色んな手続きが必要になるんだ。死んでわかったことだけど」
突如あらわになった相手の怒りに驚く。
反射的に「ごめん」とあやまりそうになったものの、理由を把握しないであやまるのも、それはそれで不誠実だろうか?
迷っている俺の前で、響野の無表情が完全に崩れ、彼は顔を歪めた。
「“大丈夫じゃない”と言って、何か解決するのか?」
朝と同じように背を向けられる。そのままスウェットの下も脱ぎはじめた相手を見て、急き立てられるように洗面所を出た。
濡れた洗濯物を抱えて向かったのは家の二階だった。建物の一部が広めのベランダ(バルコニーだろうか?)になっていて、物干し台が置いてある。敷地の外から見えるので存在は知っていたけれど、足を運ぶのは初めてだった。
階段をのぼり、響野の部屋の前を通りすぎると、奥に進む通路の左手に小さめのホールがある。ホールの先には、ベランダ(かバルコニー)に続く掃き出し窓があいていて、コンクリ敷の平らな空間をガラス越しに伺うことができた。
引き戸を開けて外に出てみれば、あたりは思いのほか静かだった。手すりの十メートルほど向こうに隣接した公園の木々が揺れている。
洗濯物を干すだけの場所にしては、面積もあって贅沢な空間だと思う。街の喧騒よりも鳥の声のほうが近いくらいで、椅子があれば森林浴ができそうだなと考えていたら、樹脂製のアームチェアが目にとまった。誰かこの家の人間で同じことを考えた人がいたのだろう。
何となく、それは響野ではない気がした。
突如あらわになった相手の怒りに驚く。
反射的に「ごめん」とあやまりそうになったものの、理由を把握しないであやまるのも、それはそれで不誠実だろうか?
迷っている俺の前で、響野の無表情が完全に崩れ、彼は顔を歪めた。
「“大丈夫じゃない”と言って、何か解決するのか?」
朝と同じように背を向けられる。そのままスウェットの下も脱ぎはじめた相手を見て、急き立てられるように洗面所を出た。
濡れた洗濯物を抱えて向かったのは家の二階だった。建物の一部が広めのベランダ(バルコニーだろうか?)になっていて、物干し台が置いてある。敷地の外から見えるので存在は知っていたけれど、足を運ぶのは初めてだった。
階段をのぼり、響野の部屋の前を通りすぎると、奥に進む通路の左手に小さめのホールがある。ホールの先には、ベランダ(かバルコニー)に続く掃き出し窓があいていて、コンクリ敷の平らな空間をガラス越しに伺うことができた。
引き戸を開けて外に出てみれば、あたりは思いのほか静かだった。手すりの十メートルほど向こうに隣接した公園の木々が揺れている。
洗濯物を干すだけの場所にしては、面積もあって贅沢な空間だと思う。街の喧騒よりも鳥の声のほうが近いくらいで、椅子があれば森林浴ができそうだなと考えていたら、樹脂製のアームチェアが目にとまった。誰かこの家の人間で同じことを考えた人がいたのだろう。
何となく、それは響野ではない気がした。
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