光の部屋、花の下で。

五日目

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　一通りの説明のあと、反応を伺うように響野を見れば、怪訝そうだった相手の顔は、いつのまにか、口元に歪んだ笑みを浮かべている。
「“さわられても勘違いするな”ってことが言いたいんなら、承知した」
　自嘲の混じった声に、またしても自分が正論で他人を殴りつけたのではないかと思った。焦りと恐怖でさっと顔がほてる。
「そういう意味で言ったんじゃないよ」
「介助のために俺にさわるけど、それは感情抜きだって話だろう？」
「それは……そうだけど……そんなふうに聞こえたか？　釘を刺すみたいな」
　俺の問いに、いっとき沈黙してから「いや」と響野は応えた。
「今のは俺の言い方が悪かった。水元には感謝してる。ここ数日だけで一生分くらい世話になった。今も不満を言ったわけじゃなくて、“了解”と伝えたかったんだ。うまく言えなかったけど」
　こちらの発言に対して一生懸命、自分を寄せていこうとする口調だった。
　逃げるように下を向いた相手の顔に自責の念が膨らんでいく。正しいことを言おうとすればするほど、本当に伝えたい内容からは遠ざかって彼を傷つけているだけのように思えた。
　……じゃあ、どうすればいいんだよ？
　弱ってすがりついてくる響野をそのまま受け入れれば良かったのか。今まで男を好きになったことはあるかとたずねたら、彼は「覚えている限りではない」と答えた。ゲイの自覚があるわけではないのだろう。
　そんな状態で関係をはじめても、いつまで続くか疑わしいと思った。うまくいかない恋愛がどれほどお互いの精神状態を悪くするかは知っている。二度とごめんだ、と思う。