光の部屋、花の下で。

三尾

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五日目

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「昨日は、あのあとふたりで少し話して……伸也君は、夕方には二階へ上がりました」
「まだ寝てる?」
「たぶん。今から部屋に行ってみますが」
「ずいぶん早くに眠ったのね。何かあったの?」
 鋭い質問にすぐには答えられないでいると、スマホの向こうから再び声が聞こえてきた。
「私と話したときも、ところどころで疲れたような顔をしていたわ。見えないことと関係があるのかしら?」
「ええと……そうですね……だるそうにしているときはあります。でも、薬の作用もあると思うので」
「薬?」
 病院から睡眠導入剤を処方されていることを伝えると、佳子さんは初耳だったのか「そう」とつぶやいた。
 正確には、早寝の理由は薬のせいばかりではないだろう。けれど、響野と話した内容をどこまで彼女に伝えて良いのかわからない。気軽に共有するには、だいぶ踏み込んだ話をしたように思っていたからだ。
「そういえば、月曜に伸也の病院の再診に付き添う約束をしたのだけど、水元君は聞いてる?」
「再診のことですか? いいえ」
 耳に当てたスマートフォンが相手のため息を拾った。
「どうしてか、そういう報連相ほうれんそうをきちんとしないのよね。自分ひとりで全部やれるつもりでいるのかしら」
「うっかりしていただけかもしれません。俺も気が回っていなくて、伸也君に何も確認しなかったので」
 自然と彼をかばうかたちになる。佳子さんが口をつぐみ、スマホの向こう側には、何がしかの意味を宿していそうな沈黙が流れた。
「水元君は、いつまで伸也のそばにいられるの?」
 やがて、探るような声音で彼女はたずねる。またも答えにくい質問で言葉につまった。
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