光の部屋、花の下で。

五日目

1

　悶々もんもんと考えごとをしているうちに夜が明けた。
　空が白みはじめた頃にようやく訪れた浅い眠りの中で、響野ひびのとセックスする夢を見た。
　夢の世界で彼と抱き合うのはこれが初めてではない。というより、中学の頃も勘定かんじょうに入れたら何度目かわからないくらいだったけれど、けさの夢はひときわリアルで、口づけた相手の肌の匂いや髪の硬さまで感じた。
　昨日本物を知ったせいだろうか？　俺の首にしがみついてきた彼の腕の強さや、涙に濡れた瞳の輝きも。
「……最低……」
　目を開けて、しばらくしてからにじんできた罪悪感を身体の外側へ押し出すようにつぶやく。身じろぎすると、まどろみの中で味わった快楽の余韻がまだ下半身に凝こごっていた。
　夢は夢で、それ以上でも以下でもない。不毛な代わりに誰かを傷つける心配もないから、いつもはここまで後ろめたい気分にはならない。
　でも今は、自分の欲望が無節操に感じられて後味が悪かった。男相手に、おそらく相応の覚悟で告白してきた響野を、応えられないと退しりぞけたのは昨日の夕方だった。にもかかわらず、その数時間後には、フった相手と絡み合う夢を見ている。
　結局ヤりたいのか？と問えば、内なる声は「そうだ」と答えた。正直すぎる自分に苦笑いしそうになる。
「好きだ」と、それ以外のどんな解釈も不可能なくらい、きっぱりしていた彼の言葉を思い出した。
　俺の首に回した腕をほどいて身体を起こした響野は、玉砕を覚悟しているとでも言いたげな思いつめた顔をしていた。
「ちゃんと言ったほうがいいと思った。昨日、驚かせたし」
「ああ、うん……」