光の部屋、花の下で。

三尾

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四日目

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 黒い目の上にある眉が、ぎゅっと中央に寄る。本当に怒っているみたいだ。
 あやまりながら、罪悪感と優越感が混じりあった複雑な気分になった。後悔する気持ちと、こんなふうに怒られるほど、自分が相手の中に残っていることを喜ぶ気持ちが両方ある。
 怒られるのは、これはもう仕方なかった。空き教室で俺に志望校を聞いてきたとき、響野は真剣だった。対する俺は、自分が引っ越すことを隠して、彼に嘘の学校名を答えた。悪いのは完全に俺のほうだった。
 L字型のソファの角をはさんだ向こう側に、大人になった響野の鋭角的に整った顔がある。肉付きの薄い頬は、今は心なしか白くくすんで見えた。
 志望校を聞かれた俺は、進路希望調査票に響野が書いた高校よりもランクがいくつか下の学校名を口にした。公立専願で行くなら、このあたりが現実的な線だろうと目星を付けていた学校の一つで、引っ越しさえなかったら本当に志望校にしていた可能性もある。
 けれど、やはり嘘は嘘だった。
 響野は自分の手元にある藁半紙を示して、「こっちにしないか?」と聞いてきた。成績は自分と変わらないのに、なぜそこまで安全策を取るのかと問われ、嘘を上塗りする羽目になる。
「ほら、俺、公立専願だから」
「私立併願だって基本は公立狙いだろう。俺も落ちる気はないよ。けど、それにしたって水元のはハードルを下げすぎじゃないか?」
「あー……成績だけじゃなくて、入ったあとも……あまり進学校だと合わないと思って」
 大学に進学するかどうかはわからない。バイトもしたいから校則で禁止している学校は困る。
 嘘を補強するために積み重ねていく言葉は、どれもひどく虚しく響いた。
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