光の部屋、花の下で。

三尾

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四日目

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 俺の変化は、おやじから「もっと学生らしい生活をしろ」と言われるようになったことだった。
「部活とか、友達づきあいとか、デートとか、色々あるだろ? 青少年が今やんなきゃいけないことが」
 おやじの気遣いはありがたかったけれど、三重で暮らしはじめたときは、もう中三の新学期がはじまったあとで、部活動はあと三か月もすれば引退だったし、転校したての中学に一緒に遊ぶ友達やデートする相手がいるはずもなかった。
 結局、中三の一年間は、デイサービスから帰ってくるばあちゃんの見守りをしながら、受験勉強に精を出してすごした。
 卒業後の進路も「ひー坊の一番行きたい高校を選べ」と言われた。私立でも。公立でも。いっそ全寮制でも。この家のことは気にしなくていい。
 神奈川にいた頃、俺がコツコツと勉強する姿を見ていたおやじは、どうやら息子にはよほど入りたい高校があったのだと思い、三重に引っ越したせいでその進路をあきらめさせたことを申しわけなく感じているらしかった。
 そういうわけではない、と説明しても、いまいち信じてもらえなかった。
 最終的に俺が選んだのは、自宅から通学圏内にある公立校で、近隣ではもっとも偏差値と校風の自由度が高かった。おやじが言うような一番行きたい高校だったかどうかは、さて置いても、自分の努力でつかんだ結果には満足していた。
 俺は正しい選択をしたはずだ。
 少なくとも、間違った選択はしなかった。……響野のようには。


 進路希望調査票は、クラスの机に入れっぱなしのまま提出期限を迎えた。
 その後も忘れたふりをして放置していたら、当然ながらクラス担任に注意を受けることになった。
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