光の部屋、花の下で。

三尾

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四日目

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「水元君の言うことなら聞くでしょうから、いざというときは伸也を説得してほしいの」
 見返すと、こちらの視線を受けた相手は口元だけで微笑んだ。
 ほかに人もいないだろうから、頼まれなくてもそのつもりではいるけれど、なぜだか言葉と一緒に、こちらの反応を見られているようで落ち着かない。
「わかりました」
 うなずいた俺に満足した様子で、佳子さんは会社からの緊急要請に応えるために玄関を出ていった。
 ドアに鍵をかけたあと、壁に沿って続く手すりを目でたどるようにして居間に戻った。
 響野はダイニングのテーブルからリビングへ移動していた。祭壇の前の床にいつも通りに座り込んでいる彼の背後を回り込むように歩いていってソファに腰をおろす。
 遺影に相対している黒い頭をななめ後ろの角度からながめたとき、祭壇に置かれた花瓶の花が新しくなっていることに気が付いた。細い花瓶の中でしゃんと背筋を伸ばしている白い花々は、佳子さんがこの家の家族のために捧げたものだった。
 ソファにいる俺をかえりみて、「お疲れ」と響野が言う。
 すっかり大人になった、かつての同級生を見ながら、佳子さんに語った自分の後悔を思い出した。
 中学生の頃、もしも響野たちにちゃんと話ができていたら、何かが違っていたんだろうか?
 たとえば、ばあちゃんの家の住所や電話番号を彼らに教えていたら、高校生になってもたまには電話をかけ合ったり、神奈川と三重のあいだのどこかで集まって遊んだりしただろうか。
 それとも、たいがいの転校生がそうであるように、連絡を取り合うのは最初のうちだけで、じきに、それぞれが自分の生活にかまけて疎遠になっていっただろうか。
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