光の部屋、花の下で。

三尾

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四日目

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 人とすごすのは好きなほうだし、知り合ったばかりの相手に理由なく嫌われることもめったにないから、自分はコミュニケーション能力の高い人間だと信じていた。
 対面でしばらく話せば、相手の人となりも、こちらに期待されていることも、一応は理解できる。期待通りに振る舞うかは時と場合によるとしても。
 それが社会に出て五年くらいでつちかった俺の自己認識だ。
 そして、ここ数日で新たに学んだのは、その自己認識はどうやら間違っていたというふたもない事実だった。


 佳子さん(片桐さん本人にどう呼べばいいかを聞いたら、下の名前で、と言われたので)は、華奢な外見から想像されるはかなげな様子とは違い、中身は現実主義者リアリストで、自分の気持ちや考えを隠したり曲げたりすることもなさそうな、からっとした人だった。
 明日も甥の様子を見にこようか?と提案してくれたときも、「できそうだから聞いてみた」という感じのいかにも軽い口調だったので、俺も遠慮せずにお願いできた。
 ちょうど由香里先輩から、神奈川にきているなら会わないかとメールをもらっていた。施設の建設予定地に行く用事があるので興味があれば、ということらしい。現場は三浦半島の付け根のあたりで、市内から往復すると電車で都内に出るよりも時間がかかるので、その間、響野を見ていてくれるという佳子さんの申し出はありがたかった。
 相手と時間の打ち合わせや連絡先交換を終えた頃、佳子さんのスマートフォンが鳴って彼女は半休を取ったはずの職場に舞い戻ることになった。
 見送りとドアの施錠のために玄関先まで一緒に向かうと、靴を履いて三和土たたきに立った佳子さんは、くるりとこちらをふり返り、「伸也をお願いね」と言った。
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