光の部屋、花の下で。

四日目

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　日がさらに短くなったせいか、最近は夕方になると心がざわつくことが多い。無人の家に帰るよりも、誰かがいる場所ですごすほうが落ち着いたので、空き教室の勉強会は、そういう意味でもありがたかった。
　おやじは、あれから週一回のペースで三重に通っている。シフトの合間を縫って帰省するから、あまり身体を休められていないのではないかと心配だったし、義理の祖母の容態も気がかりだった。
「医者の話じゃ、どうもばあちゃん、ボケがはじまってるみたいでな。あー、今は認知症って言うらしいんだが、あの通りひとり暮らしだろ」
　独り言のように、「どうしたもんだろうな」とつぶやきながら、おやじは頭をかいて考え込む。夕暮れどきに感じる不安が以前よりも強くなっているのは、彼の悩みが伝染しているのかもしれない。
　傾いた陽光が差し込む窓から目を逸らしたとき、外の廊下でタイルを踏む音がして、空き教室の扉が開いた。
「お、偉いな」という言葉とともに入ってきたのは、白衣姿の中年教師だ。
　最近では数日に一度のペースで空き教室にやってくるようになった松本は、いつも特に目的がある様子もなく、そのとき部屋にいるメンバーと雑談を交わしては、軽く室内をチェックして帰っていく。
　空き教室で、だらだらと昼寝をしたり音楽をかけたりしている生徒たちを咎めもしなければ、私物のラジカセやＣＤを何とかしろと注意してくることもなかった。教師らしくない捉えどころのなさが少々不気味ではあったものの、それも何度か訪問を受けるうちに、こんなものかと感じるようになったので、慣れというのは恐ろしい。