光の部屋、花の下で。

三尾

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四日目

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 対する俺は、来月から職探しの身分だった。連絡を入れたのは、世話になった人々に退職の挨拶をしようと思ったからで、それ以上の深い考えはなかったはずだけれど、彼女が作ろうとしている施設の話を聞くうちに、退職にいたるまでの出来事をあれこれと思い出して胸がうずいた。
「もうじき無職なんで、人手が足りなさそうなら雇ってください」
 本気と冗談が半々くらいの不真面目な言い方になってしまったのは、たぶん、自分が退職で傷ついていることを認めたくなかったからだ。今思い返しても恥ずかしくなるほど中途半端な希望の出し方だった。
 案の定、その言葉は先輩にも真剣に受け取られることはなく、諭すような消極的な返事がきたのみだった。「気持ちは嬉しいけれど」と。
「……介護士の先輩って、あのメールの女性ひとか?」
 俺と片桐さんとの会話を聞いていたのか響野がたずねる。
「そう、由香里先輩」
 施設の開所準備で忙しいはずの彼女に遠慮して、こちらからはなるべく連絡を入れないようにしている。ただ、「目の不自由なお友達はその後どうですか?」とメールをもらい、響野の視力の回復状況を伝えたり追加の留意事項を送ってもらったりと文字でのやりとりは続いていた。
「響野のお礼も伝えておいたよ。“お役に立てて嬉しい”ってさ」
 彼に頼まれていたことを思い出して報告する。てっきりそれを気にして話しかけてきたのだと思ったけれど、それを聞いた響野は複雑な顔をした。
「名前呼びなのか」
「え?」
 聞き返すと、彼は「何でもない」と再びそっぽを向く。
 何か気まずいらしい。
 中学時代と変わらず、とてもごまかし方が下手な相手を見つつ、何だよ?とまた首をかしげた。


  *  *  *  *  *


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