光の部屋、花の下で。

四日目

27

「それでスタンプラリーの調べ物もやるんじゃ大変だな」
「国はネットで調べるから、そんなに手間でもない」
　オンラインの百科事典が使えると言われて、図書館まで行こうとしていた気持ちに水を差される。
「いいな、パソコン持ち」
「水元もうちで調べるか？　日曜あたり」
　え？とまたたいているうちに、響野は俺の週末の予定がフリーであることを聞き出し、調べた内容をまとめる時間も必要だから昼前には始めようと集合時間まで決めてしまった。
「ええと……でも、俺だけ？　みんなもくる？」
　動揺しながら聞いたあとで、自分がよけいな質問をしたことに気付く。
「今決めたんだから、水元以外はこないよ」
　響野は怪訝そうな顔をした。
「“みんな”って安西たちか？」
「あー、うん……前回そうだったから」
　相手のひそめた眉を見て、焦りがわいてくる。これじゃまるで俺一人では行きたくないと言っているみたいだ。せっかく誘われたのに。
「で、でも、大勢で何度も押しかけるのも悪いよな、よく考えたら……」
「それは気にしなくていい。このあいだのは、うちの親がやりたかっただけだから」
　応えた響野は少し言葉を切ると、考えるような表情で続けた。
「だけど、迷惑だったら言えよ。じゃないと、水元がどういうことが嫌なのかわからない」
　硬い声にどきりとする。
　俺を見る黒い目は凪いでいて、響野が不満や怒りを表明しているわけではないとわかった。でも、とても真剣に話をされている。そのことも理解した。
　とっさに「何それ？」と笑いかけ、自動で浮かんできた笑みが急にものすごく腹立たしくなり、引っこめる。笑ってごまかすのは違うと思った。けれど、ほかにどんな反応を返せば良いのだろう。