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四日目
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響野伸也について、俺はどこまでわかっているだろう。そもそも確実にわかっていることなんてあるのだろうか。
俺にふれてきたときの手つきはやさしかった。至近距離で見た黒い目は、熱っぽく濡れていてきれいだった。そこには“気遣い”ではない別の言葉や感情が入る気がする。
だとすれば、それはいつから、どうしてだろう?
夕食どきに響野が見せた動揺を思い出して、また胸が痛んだ。
……やっぱり、どうにかしたほうが良い気がする。
中継駅に電車が着いて私鉄のホームを目指しかけたとき、スマホを取り出した本来の目的を思い出した。
通路のすみに移動して、最寄りの訪問介護ステーションを地図アプリ上に表示させる。行きの電車でマークしたマップポインターのすぐそばに新たなポインターが現れるのを見て、思わず指が止まった。
頭に、二つの選択肢が浮かぶ。
一つ目は、このまま帰宅して響野と自分の昼食を作ることだ。ただし、LINEのメッセージによれば、彼はこれから朝食をとるようだから、あわてる必要はないだろう。
それなら、二つ目の選択肢をためしてもよいだろうか? 徒歩で回れる距離にある二つのマップポインターを見ているうちに、不安と懐かしさの入り混じった複雑な感情がこみ上げてくる。
もしかしたら、響野との問題を先延ばしにしたくて時間稼ぎをしているだけかもしれない。寄り道を決めてホッとしている自分にそう思う。
けれどもすぐに、先延ばしのどこが悪いんだ?と思い直した。仕事のことも、響野のことも、自分自身の過去についても、考えを整理する時間は必要だ。
ホームの電光掲示板を確認して、ホームに入ってきた快速特急をやりすごし、停車駅の多い急行電車の到着を待った。
俺にふれてきたときの手つきはやさしかった。至近距離で見た黒い目は、熱っぽく濡れていてきれいだった。そこには“気遣い”ではない別の言葉や感情が入る気がする。
だとすれば、それはいつから、どうしてだろう?
夕食どきに響野が見せた動揺を思い出して、また胸が痛んだ。
……やっぱり、どうにかしたほうが良い気がする。
中継駅に電車が着いて私鉄のホームを目指しかけたとき、スマホを取り出した本来の目的を思い出した。
通路のすみに移動して、最寄りの訪問介護ステーションを地図アプリ上に表示させる。行きの電車でマークしたマップポインターのすぐそばに新たなポインターが現れるのを見て、思わず指が止まった。
頭に、二つの選択肢が浮かぶ。
一つ目は、このまま帰宅して響野と自分の昼食を作ることだ。ただし、LINEのメッセージによれば、彼はこれから朝食をとるようだから、あわてる必要はないだろう。
それなら、二つ目の選択肢をためしてもよいだろうか? 徒歩で回れる距離にある二つのマップポインターを見ているうちに、不安と懐かしさの入り混じった複雑な感情がこみ上げてくる。
もしかしたら、響野との問題を先延ばしにしたくて時間稼ぎをしているだけかもしれない。寄り道を決めてホッとしている自分にそう思う。
けれどもすぐに、先延ばしのどこが悪いんだ?と思い直した。仕事のことも、響野のことも、自分自身の過去についても、考えを整理する時間は必要だ。
ホームの電光掲示板を確認して、ホームに入ってきた快速特急をやりすごし、停車駅の多い急行電車の到着を待った。
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