光の部屋、花の下で。

三尾

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四日目

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「あ、ええと、みんなで」
水元おまえ……気がはえーよ」
「そうだ。まずは期末だ」
 安西と響野の双方から示し合わせたようにツッコミがきた。
「それに、一緒の高校に行くって手もあるだろう?」
響野おまえとかよ?」
 鼻で笑った安西に、ごく普通のテンションで「頑張ろうぜ」と響野は応える。
 その日も、夕食の支度をする時間ぎりぎりになるまで空き教室ですごした。じきに和田も合流して、全体の三分の二くらいは真面目に勉強し、あとの三分の一は、休憩が名目の雑談タイムだった。
 友達と勉強するメリットのもう一つは、自分以外の人間が、ただそこに居てくれることだと思う。
 二年の前期期末テストは、週明けの月曜日からはじまった。
 空き教室での勉強会が効いたのか、その試験は今までになく、どの教科も点数が良かった。


  *  *  *  *  *


『面接と施設の見学に行ってくる。帰りは午後になると思うから、また連絡するよ。』
 メッセージを打ち込んで送信ボタンをタップしたあと、追加の連絡事項を思い出した。同じ動作をくり返して、もう一度LINEを送る。
『テーブルに朝飯出しておいた。食べられるようなら食べて。』
 ぽん、と軽い音とともに、一つ目の吹き出しの下に二つ目が並んだ。それを確認して和室の客間を出る。
 けさは響野と顔を合わせていなかった。この時間になっても部屋から出てこないということは、まだ眠っているのだろうか。
 前夜の出来事を思い出して、起きていても応えたくない可能性だってあるよな、と考える。革靴に足を突っ込んだところで、念のためにアプリを開いてみたけれど、二つのメッセージのどちらにも既読はついていない。
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