光の部屋、花の下で。

四日目

9

　特別教室棟の廊下を歩いていく俺たちの背に、「テスト勉強しろよ」と松本の声がかかった。
「うるせえよ」
　言い返した安西を小突いて黙らせると、相手から反撃の蹴りがきたので、リュックを振りかぶって応戦する。殴り合いになる寸前で響野と和田と横山に三人がかりで止められた。
「悪かった、俺のせいだ」
　特別教室棟を出たところで響野があやまった。部活が終わって帰る前に、松本に呼び止められたらしい。
「二階で何をしてるか聞かれて、うまく説明できなかった」
　校則違反はしていないと答えたが、声をかけた以上、松本もそう言われただけで納得はしないだろう。まずいことになりそうだと判断した響野は、一緒に帰ろうとしていた横山に目配せして、空き教室のメンバーに知らせるよう頼んだ。
「けっこう前から知られてたっぽいね」
　彼の話を聞きながら、空き教室が教師の訪問を受けたことに対してそれほど動揺していない自分に気が付く。そもそも隠れている認識がなかったせいだ。移動教室のとき以外は忘れ去られたような学校の僻地へきちにある建物だったから、中ですごしているときも出入りのときも、ほとんど神経を使っていなかった。
「響野のせいじゃないよ。みんなうるさくしてたし……学校なんだから、そのうち誰かきたと思う」
　責任を感じているらしい相手をフォローする。
「何も悪いことしてないのに……」と和田が不満げなつぶやきを漏らした。
「そうだよ、だから堂々としてればいいんだ。出入り禁止とか言われたわけじゃないんだし」
「でも、また見にくるって言ってたよね。あれどういう意味だろ？」