光の部屋、花の下で。

三尾

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四日目

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「ごめん、また置かせてくれる?」
 動物病院から戻った和田が、そう言ってすまなさそうに空き教室に鳩を連れてきても、体育の授業中から一部始終を見ていた面々は、当然、誰も驚かなかった。
 がらりと教室の扉が開いて、その和田が古新聞の束と鳥の餌を抱えて入ってくる。俺と安西に軽く挨拶すると、彼はケージに近づいて慎重に布をはずした。そのまましばらく動かなかったのは、鳩の羽根の具合を観察していたようだ。
「和田って、動物のお医者さんに向いてそう」
 鳩を観察する和田を観察しながら言うと、彼はこちらをふり返って「よく言われる」と笑った。
「でも僕、文系なんだよねー。あと獣医学部って学費かかるみたいだし」
 学費、という単語が当たり前のように同級生の口から出てきたことに動揺する。
 進路を選ぶときの基準は成績だけではないのだ。ぼんやりと視界に入れながらも、ずっと見ないふりをしていた現実を目の前につきつけられたようだった。
 広げた新聞紙を縦に裂いた和田は、それを折りたたんでからケージの下のトレイを手前に引き出す。檻の中で鳩が動き、金属の網を踏む、かしゃっという音がする。
「……それと、人のそばにいない動物のほうが興味あるんだ、どっちかと言えば」
 少し早口の声が補足するように言って、おやと思った。
「野生動物ってこと?」
「かな? まあ……でも、人との距離が近い野生動物もいるよね。こういう鳩みたいに。それで、糞が汚いって言われて迷惑がられたりする」
 トレイの新聞紙を交換した和田は、持ってきた鳩の餌をプラスチック製の餌入れに足した。作業をしながらの声はどことなく覇気がない。
 昨日の保護センターの一件を言っているんだろうか?と考えた。
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