光の部屋、花の下で。

三日目

21

　すぐにトートバッグを肩にかけた和田も合流した。彼はドーナツ店のロゴが入った袋を手に提げていた。ここにくる途中で買ってきたのだろう。
「それ、響野んちに？」
　ドーナツの袋を指してたずねた俺に、ああうん、と和田はうなずいた。
「そういう手土産みたいなのって、やっぱり必要なんだ？」
　何も用意していない自分に、にわかに焦りを覚える。
「え……別にいいと思うよ。僕もお母さんに買っていけって言われてお金渡されただけだから」
　そう言って、和田はどこか恥ずかしそうに箱詰めのドーナツが入った袋を見おろした。親にお膳立てをしてもらったことを気にしたらしい。
　少し遅れてやってきた安西も、手土産のことなどは、やはり何も思いついていなかった。そのことにほっとして、和田に見せてもらったレシートの代金を四人で割り勘にする。
　親の金の大半が戻ってきた和田は、「何かごめんね」と恐縮した。
「いいよ、こっちが便乗させてもらうんだし。猫のミルク代の足しにすれば？」
「もういないって」
「そのうちまた拾うだろ」
　安西のせりふを聞いた和田が苦笑する。そうして彼は、子猫のダンボール箱を見つけた場所を教えてくれた。公園の一角にある、背の低い遊具がいくつか置かれている幼児向けの広場だった。
　集合場所から先は響野の家を知っているという横山に案内を頼んだ。公園の外周を走る道路に沿って、緑と街の境目を歩いていく。
「横山君は響野君とつきあい長いの？」
　樹木の落とす影の中を歩きながら、和田はとなりに並んだ横山にたずねた。