光の部屋、花の下で。

三日目

10

　昼間の班行動では別グループだったけれど、寝室はゆうべも響野と一緒だった。寝る直前までは同室のメンバーであれこれと雑談をするので、ある程度は気がまぎれる。問題はそのあとだ。布団ごしに相手の寝息が聞こえてきて、いつもの夜の妄想を思い出してしまうとき。
　風呂を上がって脱衣所を出ると、自然教室の生徒たちで貸し切りのフロアはすでに照明が落ちていた。見回りの教師に「早く寝ろ」と叱られながら部屋へ戻る。
　消灯後の和室では八つの布団のうち七つまでが人型に膨らんでいた。何人かはまだ起きていそうな気配がするものの、昼間のトレッキングが効いたのか、昨日より寝落ちしている人数が多そうだ。
　自分の布団にたどり着いて横を伺うと、響野ももう眠っていた。
　視界のすみに黒い頭を入れるのが精一杯で、なるべく彼から離れ、背を向けて横になる。下半身の変化には絶対に気づかれたくないのに、となりから聞こえてくる寝息に耳をそばだてることもやめられなかった。
　ぎゅっと縮んだ胸が、苦しさを通り越して痛みを訴えはじめる。
　今夜も眠れそうになかった。


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　午前中、何か変わったことはなかったかと聞くと、響野は深めの皿の内側でスプーンを動かしながら「耳が良くなった気がする」と答えた。
「変わったことっていうより自分の身体が変わったと思う部分だけどな。目がダメになったぶんを別の箇所がカバーしてるんだと思う」
　俺はといえば、彼が皿から炒飯をすくって口に運ぶ様子をテーブルごしにながめていた。
　やっぱり食べ方がきれいだなと思ったあとで、介護施設の食事風景と響野のそれを無意識に比較している自分に気付く。