光の部屋、花の下で。

三日目

5

　クラスにいるときの横山は、丸い身体を前かがみにして、よく教室のすみっこのほうにいる。しゃべっている姿はあまり見たことがない。
　空き教室にきたときの彼も、やっぱり身体を丸めて申し訳なさそうにしていた。普段より三割増しくらいおどおどして見えたのは、たぶん、窓ぎわの昼寝スペースに陣取っている安西あんざいと目が合ったせいだろう。
　ゴールデンウィークが明けた頃から、安西は自分のクラスに登校してくるようになった。わりと熱心に授業を聞いているときもあれば、机に突っ伏して寝ているだけのときもあり、学習態度はムラが激しい。授業中の昼寝を教師にとがめられてもびくともしないふてぶてしさもクラスの中では浮いていた。
　安西と普通に話をするのは、今のところ空き教室に集まるメンバーのみだった。響野も和田もあまり羽目を外さない優等生ポジションの生徒と見られていたから、“不良”の安西との取り合わせは、クラスメイトの目には奇異に映ったはずだ。どこにも共通項のなさそうな三人に、もしも似た部分があるとすれば、そういう教室内の空気をほとんど読まないところだった。
　横山はどうだろう？と様子をうかがうと、ダンボール箱を覗きこんだ彼は、子猫を見てぱっと顔を輝かせた。横では和田が、公園で拾ってから今までの子猫たちの経緯を説明している。
「親に聞いてみるよ」
　携帯電話を取り出して子猫たちの写真を何枚も撮影すると、横山は約束した。
　一年生の終わり頃、彼の家では飼っていた猫を病気で亡くしたという。クラスにいるときよりもだいぶ饒舌に、亡き猫との思い出をときどきは涙ぐみながら話した横山は、二日後には両親の許可を得て子猫を引き取っていった。