光の部屋、花の下で。

三尾

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三日目

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「食事はきちんととるようにしないと、また点滴のお世話になるぞ」
水元みずもとも家で食うかと思って、待ってた」
 見えない目をこちらに据えたまま響野は言った。
「それとも外ですませたか?」
「いや、まだだよ。炒飯を作りすぎてけっこう余ってるから」
「じゃ、待ってて正解だ。一緒に食おうぜ」
 相手は嬉しそうに笑う。普段はお世辞にも愛想の良いタイプではないのに、ときどきこうして、はっとするほど無邪気な好意を向けられる。
 別に響野に限った話ではなかった。同性に親愛の情を示すときにデリケートな配慮をするノンケの男なんてお目にかかったことがない。ただ、カミングアウトをしていない自分に、その鈍感さを責める資格があるとも思えない。
 俺と一緒に食事したかったの? 何で?
 冗談めかして聞いてみたかったけれど、きちんと冗談として処理できる自信がなかったのでやめておいた。
「そうだね……着替えてくるよ」
 あたりさわりのない返事をしたつもりが、胸の内の複雑な感情が漏れ出てしまったようだ。響野の顔から笑みが消え、黒い瞳が不思議そうにまたたく。
 自分が小さな失敗を犯したことに気付いて、逃げるように和室へ行った。


  *  *  *  *  *


 和田わだの拾った子猫たちが巣立っていくのに前後して、空き教室にたむろするメンバーがひとり増えた。
 同級生の横山よこやま太一たいちは、響野と同じ技術部員で、ある日の放課後、彼に付き添われるかたちで空き教室にやってきた。子猫の飼い主募集の話を響野から聞いて実物を見にきたらしい。
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