55 / 377
二日目
30
しおりを挟む
たちまち相手の置かれた状況を思い出して、脳天気な気分がしぼんでいった。
「オッケー、ばっちり」
あえて明るい声で告げると、響野はようやく安堵したように息をついた。
洋服の整理が終わったあともやるべきことはたくさんあった。今度は一階に場所を移して、台所の棚や冷蔵庫から中身を全部取り出し、衣類と同じように簡単なルールを決めて仕分け直す。傷んだ食べ物や、消費期限の切れた食材は仕方なく廃棄した。ダイニングテーブルの一角に積まれているDMや新聞紙も。
脱衣かごに溜まった洗濯物を片付けるために洗濯機を回し、フローリングの上の植物やマガジンラックは部屋のすみへ移動させる。
あれこれと動き回っているうちに、身体が空腹を訴えはじめた。何か作ろうと台所に戻り、目にとまった炊飯器で米を炊く。手づかみで食べられる物のほうが良いだろうと、炊き上がった米は全部おにぎりにした。
響野はと言えば、リビングのソファで何やら丸みのある機械と相対していた。音声で機械に指示を出しているようだ。
「少し休憩しよう」
昼食の準備ができたところで声をかけた。お盆を持ってローテーブルまで行くと、気配を察した響野が顔を上げる。
「海苔の匂いがするな」
「おにぎりだよ。あと味噌汁」
機械をテーブルのすみに移動させた相手におしぼりを渡した。肉付きのうすい頬が嬉しそうに緩む。冷蔵庫にあった梅干しや鮭フレークを適当に包んだおにぎりと、カップにお湯を注ぐだけの味噌汁で、そんな顔をしてもらうのは申しわけないくらいだ。
「オッケー、ばっちり」
あえて明るい声で告げると、響野はようやく安堵したように息をついた。
洋服の整理が終わったあともやるべきことはたくさんあった。今度は一階に場所を移して、台所の棚や冷蔵庫から中身を全部取り出し、衣類と同じように簡単なルールを決めて仕分け直す。傷んだ食べ物や、消費期限の切れた食材は仕方なく廃棄した。ダイニングテーブルの一角に積まれているDMや新聞紙も。
脱衣かごに溜まった洗濯物を片付けるために洗濯機を回し、フローリングの上の植物やマガジンラックは部屋のすみへ移動させる。
あれこれと動き回っているうちに、身体が空腹を訴えはじめた。何か作ろうと台所に戻り、目にとまった炊飯器で米を炊く。手づかみで食べられる物のほうが良いだろうと、炊き上がった米は全部おにぎりにした。
響野はと言えば、リビングのソファで何やら丸みのある機械と相対していた。音声で機械に指示を出しているようだ。
「少し休憩しよう」
昼食の準備ができたところで声をかけた。お盆を持ってローテーブルまで行くと、気配を察した響野が顔を上げる。
「海苔の匂いがするな」
「おにぎりだよ。あと味噌汁」
機械をテーブルのすみに移動させた相手におしぼりを渡した。肉付きのうすい頬が嬉しそうに緩む。冷蔵庫にあった梅干しや鮭フレークを適当に包んだおにぎりと、カップにお湯を注ぐだけの味噌汁で、そんな顔をしてもらうのは申しわけないくらいだ。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら
夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。
テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。
Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。
執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる