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二日目
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ベッドを置いていないほうの壁ぎわには長い木製の板が渡してあり、パソコンが三台も置いてあった。うち一つにはディスプレイがふたつ付いている。
渡し板の横には造りつけの棚があって、何をするのか見当もつかない機械や道具類の陳列場所になっていた。棚の下段に見える半透明の引き出しも、こまごましたパーツ類であふれ返っているのがわかる。
部屋は広くなっていたし、機器類のグレードも上がっていそうだけれど、中学生の頃、テスト前や長期の休みに遊びにきていた響野の部屋と、印象はそれほど変わらなかった。学校の教科書やノートが仕事関係のものらしい書類やテキストに変わり、本棚に技術書とビジネス書が増えたくらいか。むしろ以前よりも作業場のような雰囲気が濃くなっていて、趣味の部屋とホームオフィスを足して二で割ったみたいな色気のなさだ。
この部屋で彼女とすごしたりすることがあるんだろうか?
つい、そんな方向へと思考がずれる。朝食のときに話を振ってみたら「恋人はいない」と言っていた。「モテない」とも。
そのあとに教えてもらった勤め先の企業名を聞いて、「んなわけねーだろ」と突っ込みたくなったけれど、相手が恋愛や結婚の話題を疎ましく思っているのは明らかだったから蒸し返すことはしなかった。
「水元?」
名前を呼ばれて我に返る。見返した先には、怪訝そうな表情を浮かべた響野の顔があった。衣類の仕分けについて話しあっている最中だったことを思い出す。
「ごめん、ぼんやりしてた。どう?」
たずねながら、彼が手にしている服を覗きこんだ。
渡し板の横には造りつけの棚があって、何をするのか見当もつかない機械や道具類の陳列場所になっていた。棚の下段に見える半透明の引き出しも、こまごましたパーツ類であふれ返っているのがわかる。
部屋は広くなっていたし、機器類のグレードも上がっていそうだけれど、中学生の頃、テスト前や長期の休みに遊びにきていた響野の部屋と、印象はそれほど変わらなかった。学校の教科書やノートが仕事関係のものらしい書類やテキストに変わり、本棚に技術書とビジネス書が増えたくらいか。むしろ以前よりも作業場のような雰囲気が濃くなっていて、趣味の部屋とホームオフィスを足して二で割ったみたいな色気のなさだ。
この部屋で彼女とすごしたりすることがあるんだろうか?
つい、そんな方向へと思考がずれる。朝食のときに話を振ってみたら「恋人はいない」と言っていた。「モテない」とも。
そのあとに教えてもらった勤め先の企業名を聞いて、「んなわけねーだろ」と突っ込みたくなったけれど、相手が恋愛や結婚の話題を疎ましく思っているのは明らかだったから蒸し返すことはしなかった。
「水元?」
名前を呼ばれて我に返る。見返した先には、怪訝そうな表情を浮かべた響野の顔があった。衣類の仕分けについて話しあっている最中だったことを思い出す。
「ごめん、ぼんやりしてた。どう?」
たずねながら、彼が手にしている服を覗きこんだ。
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