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二日目
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「技術部もこの棟だろ。二階は行ったことある?」
階段をのぼりながらたずねると、響野は首を振って「用事がない」としごくまっとうな意見を述べた。
「一番奥の部屋だけ、鍵が壊れてるんだ」
「鍵?」
うん、と俺が答えるあいだに、響野も自分たちの目指す場所が無人ではないことに気付いたようだった。朝と同じく小さな生き物の声が廊下まで漏れている。
教室のドアを開くと、室内にはこれも朝と同じく安西と和田の姿があった。違うのは子猫のダンボールがひと回り大きくなり、周囲にペットシーツやペット用のキャリーバッグなどが増えていることだ。
床にあぐらをかいて、哺乳瓶で子猫にミルクをやっている和田に「やあ」と挨拶した。となりの響野をちらりと伺うと、さすがに意表を突かれたのか、切れ長の目が丸くなっている。
「あれ、響野君?」
ふり返った和田が俺のとなりを見て言った。
そういえば、ここにいるメンバーは全員、同学年なうえに同じクラスだ。奇妙な巡り合わせもあるものだ、と感慨にふけっていると、運動マットに寝転んだ安西と目が合う。響野を連れてきたことについて文句の一つでも言われるかと思ったけれど、本人は不服よりも怪訝さの勝ったような顔で、俺の横の新たな侵入者をながめていた。
「それで、これなんだけど」
安西の反応を待っていても仕方がないので、机の山の一角からCDラジカセを取り出して響野に見せる。
彼は手を伸ばして機械にふれた。検分するようにダイヤルやボタンを動かす指先は、爪が短く切りそろえられていて、中学生男子にそぐわない清潔感がある。
階段をのぼりながらたずねると、響野は首を振って「用事がない」としごくまっとうな意見を述べた。
「一番奥の部屋だけ、鍵が壊れてるんだ」
「鍵?」
うん、と俺が答えるあいだに、響野も自分たちの目指す場所が無人ではないことに気付いたようだった。朝と同じく小さな生き物の声が廊下まで漏れている。
教室のドアを開くと、室内にはこれも朝と同じく安西と和田の姿があった。違うのは子猫のダンボールがひと回り大きくなり、周囲にペットシーツやペット用のキャリーバッグなどが増えていることだ。
床にあぐらをかいて、哺乳瓶で子猫にミルクをやっている和田に「やあ」と挨拶した。となりの響野をちらりと伺うと、さすがに意表を突かれたのか、切れ長の目が丸くなっている。
「あれ、響野君?」
ふり返った和田が俺のとなりを見て言った。
そういえば、ここにいるメンバーは全員、同学年なうえに同じクラスだ。奇妙な巡り合わせもあるものだ、と感慨にふけっていると、運動マットに寝転んだ安西と目が合う。響野を連れてきたことについて文句の一つでも言われるかと思ったけれど、本人は不服よりも怪訝さの勝ったような顔で、俺の横の新たな侵入者をながめていた。
「それで、これなんだけど」
安西の反応を待っていても仕方がないので、机の山の一角からCDラジカセを取り出して響野に見せる。
彼は手を伸ばして機械にふれた。検分するようにダイヤルやボタンを動かす指先は、爪が短く切りそろえられていて、中学生男子にそぐわない清潔感がある。
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