光の部屋、花の下で。

三尾

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二日目

16

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 つまようじの先ほどの小さな爪のついた前足が、ダンボールの壁面をかりかりと引っ掻く。ふれたら壊れてしまいそうな繊細な生き物だった。
「くる途中で見つけて、とりあえず連れてきたんだけど、教室に持ち込むのもマズいだろうから、どうしようかと思って。そしたら安西君が、どこでもいいなら場所はあるって案内してくれたんだ」
 和田の告白があまりに意外で、思わず安西を見る。俺の視線を受けた本人は、苛立たしげに舌打ちをした。
「うるせーぞ、水元」
「まだ何も言ってないだろ……」
「ええと、それで、ここはどういう場所? 安西君と水元君の秘密基地とか?」
 険悪になりそうな場の空気をなごませようとしたのか、和田はたどたどしく俺たちの会話に入ってくる。“秘密基地”という言葉の響きがやけに子供っぽくて苦笑した。
「どういう場所でもねえよ」
 俺と似たような感想を抱いたのか、むっつりと安西が答える。
「見たまんま、ただの教室だ」
「強いて言えば、安西はときどき授業をサボってここで寝てる」
「あ、そうなんだ……」
「水元、おまえマジでうるせえ」
「まあ、俺も和田もこうして便利に使ってるし、そこはお互い様ってことで」
 和田は戸惑いながらも、俺に向けていた目を安西に移し、「わかった、誰にも言わない」とうなずいた。
「その代わり、猫、ここに置かせてもらっていいかな?」
「学校で飼うつもり?」
「わからないけど、とにかく、今日の放課後までは居させてもらえると助かる」
「好きにしろよ」
 聞こえてきた返事に安西を見ると、彼は窓の下に敷いた運動マットのほうへ歩いていくところだった。どさりと腰をおろし、そのまま寝転がる。
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