光の部屋、花の下で。

三尾

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一日目

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 もっとも、何度か似たような経験するうちに、ほとんどの他人は、俺の〈日本人濃度〉みたいなものには、それほど興味がないことに気が付いた。
 つまり、適当に答えておけば良い質問なのであって、「日本国籍を持ってるんだから“二分の一ハーフ”じゃなくて日本人ですよ。そうでしょう?」などと言えば、とたんに面倒くさい人間のレッテルを貼られる。プライベートならばともかく、面接の場でそれは避けたかった。
 トイレを出たあと、待合室の壁に貼られた病院のフロアマップを見ながら福祉サービスセンターの位置を確認する。
 現在地の一階部分と、二階のフロアの半分ほどは外来用の診察室や検査室になっているらしかった。さらに上の階は手術室。入院室は建物そのものが別棟だ。
 案内図の横には掲示板があって、来院者に向けたものらしい但し書きが貼ってある。
『タクシーの送迎は専用の乗降場をご利用ください。サポートの必要な方は病院玄関口まで乗り入れできます。』
 となりの案内図と見比べながらそんなメッセージを読んでいると、自分がどうしようもなくヒマを持てあました人間に思えた。


 声をかけられたのは、スタート地点の玄関まで戻ったときだった。
 見学を終えても、面接にはまだ十五分ほど余裕があった。うろつくのも限界にきていたので、待合室のベンチにきびすを返しかけたとき、一台のタクシーが門を通り抜けて病院の敷地に入ってくる。
 タクシーはロータリーをぐるりと半周し、建物の入口付近で速度をゆるめた。フロントガラスの奥のほうから玄関先をうかがっている運転手と目が合う。
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